欧州

2024.04.07 11:00

「70年前の戦車を使うエリート師団」が映すロシアの苦境と魂胆

ロシア中部トゥーラの兵器博物館で屋外展示されているT-55戦車。2022年5月撮影(Nadezhda Gerasimova / Shutterstock.com)

もっとも、ロシアにはそれしか選択肢がないわけではない。ロシアは前線の攻撃を停止し、戦闘部隊を徐々に再建することもできる。だが、ロシアは時間をかけて部隊に訓練を施し、近代的な装備を配備するのではなく、ありったけの装備や人員をかき集めて攻撃を続ける道を選んでいる。
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ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは4日、「ロシアは新兵の募集、新たな部隊や軍区の創設などによって、軍の再建と、損失を補充する取り組みを継続的に進めている」と解説している。とはいえ、ロシア軍は戦力を回復できているわけではない。

「われわれは少なくとも1つの戦車部隊で、さまざまな改修型T-72戦車が(1960年代に開発された)T-62戦車やT-55に置き換えられている証拠を記録した」とフロンテリジェンス・インサイトは述べている。「すべての部隊の状況を把握しているわけではないが、いくつかの方面でT-55やT-62の使用が時おり映像で確認できるので、これが特殊なケースではないとわかる」

それでも、60年物のT-62や70年物のT-55を与えられたロシア軍の連隊や旅団、師団は、まだ恵まれているほうだと言えるかもしれない。
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オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト、オリックス(Oryx)の集計によれば、ロシア軍は2022年2月の全面侵攻開始後、ウクライナで1万5000を超える装備を損耗した。戦車の損害は2900両近くを数える。これは全面侵攻時点でロシア軍で現役だった戦車の数とほぼ同じだ。

「これほどの数(の装備)をロシアが2年以内に補充するのは不可能だ」とフロンテリジェンス・インサイトは書いている。ロシアの戦車の新造数は年間で600両ほどとみられ、再就役させている古い戦車の数もそれよりやや多い程度にとどまる。

つまり、補充される戦車の数は全然足りていない。ロシア軍による突撃でこのところ、無装甲の民生車両が使われることが多くなっているのはそのせいだ。驚くべきことに、ゴルフカートのような中国製デザートクロス全地形対応車まで登場した。「失われた装甲車両は民生車両で置き換えられている」とフロンテリジェンス・インサイトも指摘している。

民生車両ですら、あるだけましだ。ロシア軍の部隊にとって最悪のケースは、使える車両がもはやまったくない、というものだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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