だが、このテスラ・ロードスターにロケットを搭載すれば、相当な推進力を得ることができる。工学的観点から見れば、これは理に適っている。モーターの負担を減らし、必要なグリップも少なくて済むようになるからだ。
噂によると、マスクは圧縮空気を噴射する10基のコールドガスロケットスラスターを使用するつもりだという。不活性窒素や圧縮大気を使えば、燃料燃焼式ロケット(排気温度は摂氏3200度を超える)の小型版より威力は小さいものの、それでも車体後部の噴射口から空気を2400km/h以上(!)で噴出することができる。このようなロケットが推進を補助する車両を、現実に他の自動車や自転車、歩行者も通行する公道で走らせることは、馬鹿げているとしか言いようがない。
これまで、どの自動車メーカーも、商業的に実現可能な「空飛ぶクルマ」を一般に提供したことはない。それには物理的な問題(空飛ぶクルマには揚力を発生させるための翼や回転翼が必要だ)や、技能的な懸念(テスラは顧客に飛行訓練を提供するのだろうか?)、法的なハードル(米連邦航空局はテスラ・ロードスターを航空機として認可するだろうか?)がある。そしてこれらの問題は、まず、公衆が初心者の所有する重量2トンのクルマが頭上を飛び回っても安穏としていられると仮定した上での話だ。
イーロン・マスクとテスラは、最近の例では「サイバートラック」のような、業界を揺るがす数々の自動車を作り出してきたが、いつまでも懐胎が続くテスラ・ロードスターは、日が経つに連れて普通のスポーツカーではなくなってきている。ほとんどの自動車専門家は、マスクは最終的にテスラ・ロードスターを発売するだろうと語っている。だが、それは法外に高価で、生産台数も非常に少なく、さらにそれが注目を集めるためのうまく仕組まれた売名行為だと考えれば、公道走行不可のクルマになる可能性もある。
(forbes.com 原文)