2024.04.05

「ロケット」を搭載したテスラ・ロードスターは本当に発売されるのか?

第2世代テスラ・ロードスターのプロトタイプ (Tesla)

テスラの創設者イーロン・マスクは2017年に、完全新設計となる第2世代のテスラ・ロードスターが2020年に登場すると、自信を持って発表した。この4名分の座席を備えた流麗なスポーツカーは、型破りな電気自動車(EV)メーカーとして知られるテスラの製品としては、珍しく伝統的なデザインのクルマに見えるが、驚くべき性能を約束するものだった。

プレス向け発表会で、マスクはこのクルマが停止状態から60mph(約97km/h)の速度までわずか1.9秒で到達でき、1/4マイル(約400m)の距離を8.8秒で走り抜け、最高速度は250mph(約402km/h)に達すると主張した。これらの数字が正しければ、これから登場するテスラ・ロードスターは、路上で最も高性能なクルマの1つになるはずだった。

それから7年が過ぎたが、第2世代のテスラ・ロードスターはまだ約束の段階を出ていない。しかし、イーロン・マスクは、2025年に発売される(と約束し直した)このクルマを再びスポットライトの下に引き出し、さらに驚くべき性能を改めて主張したのだった。
100km/h近い速度まで1秒以下で加速? (Tesla)

100km/h近い速度まで1秒以下で加速? (Tesla)

1カ月ほど前、マスクは新型ロードスターが0-60mphを1秒以下で加速できると明言した。これは以前の主張の2倍に近い速さだ。自動車情報メディアの「Automotive News」や「Jalopnik」が報じたところによると、このスポーツカーにはマスクが率いるもう1つの会社である宇宙開発企業スペースXのテクノロジーが注入されるという。それによって新型テスラ・ロードスターは、ロケットエンジンを搭載し、さらに空まで飛ぶかもしれないというのだ。

テスラのCEOによるこの主張は、メディアを騒然とさせ、消費者を混乱させた。それにはもっともな理由がある。

乗用車を停止状態から60mphまで1秒以下で加速させるためには、途方もないパワーと強大なグリップが必要だ(駆動した車輪を推進に使うと仮定すれば)。推進力=質量×加速度という方程式を用いて計算してみると、疑わしげな数字が浮かび上がってくる。Jalopnikによると、等加速度直線運動で1秒以内に60mphに到達する車両は、少なくとも重力の2.8倍に相当する力で加速しなければならないというのだ(ほとんどのクルマは重力の0.3倍以下で加速する)。宇宙飛行士ではない運転者と同乗者は目眩がして気分が悪くなるだろう(高層ビルの窓からボーリングの球を落とすと、60mphに加速するまで2.73秒かかる)。
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翻訳=日下部博一

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