イーロン・マスクの「シャツを畳むロボット」、動画でトリックがバレてしまう

テスラの研究室でロボットがシャツを畳んでいるところ(Xの動画のスクリーンショット)

イーロン・マスクは1月15日、ヒト型ロボットのOptimus(オプティマス)がシャツを畳む動画を公開した。マスクはその後のツイートで、ロボットが自律的に動いているわけではないことを認めたものの、ロボット工学の未来に関心のある誰もが大いに興味を持つ内容だった。しかし、動画をよく見ると、これは「ロボットが手伝ってくれる生活」の大躍進というよりも、手品に近いものであることがわかる。

X(旧ツイッター)に投稿されたその動画では、オプティマスがTシャツをカゴから取り出し、両手を使って丁寧に畳んでいる様子を見ることができる。マスクはXで次のように語った、「オプティマスはまだこれを自律的にはできませんが、いずれ間違いなく、どんな環境でも自律的にできるようになるでしょう(固定されたテーブルやシャツが1枚しか入っていない箱を必要としなくなるということ)」


しかし、観察眼の鋭い人なら、何かが画面の右下に映り込んでいることに気づくだろう。技術者が画面のすぐ外で、ロボットがどう動くべきかを指示しているように見えるのだ。

人間の手がテスラのロボットの動きを支配しているように見える(Xのスクリーンショット)

人間の手がテスラのロボットの動きを指示しているように見える(Xのスクリーンショット)

視聴者にはフレーム内に何度も手が映り込むところが見え、すぐそばにいる誰かの動きをロボットが真似しているだけなのではないかと思えてくる。そしてこれは決して新しいテクノロジーではない。実際、1960年代には存在していた技術だ。

ディズニーは1964年のニューヨーク万国博覧会のために同様のテクノロジーを使った展示を行った。イリノイ州のパビリオンのために作られたエイブラハム・リンカーンのロボットは、立ち上がり、生きているかのように手足を動かし、話をすることもできた。そしてその動きはすべて、ロボットが人間の動きを模倣するようにプログラムされたものだった。

テスラのような会社がロボット工学を研究しているところを見るのは楽しいが、お手伝いロボットと一緒に生活する、という人類が1世紀以上にわたって待ち続けている未来の目標への道のりはまだ遠いようだ。オプティマスは1964年にできていたこと以上の能力は持っていないようであり、2010年代にDarpa(国防高等研究計画局)のチームが成し遂げた飛躍的進歩にはほど遠い。

マスクは2021年の夏に新しいロボットの開発を発表したが、そのとき彼が紹介したのは本物のロボットではなく、全身タイツに身を包んで踊る人間だった。彼の判断は当時、冷笑の的となった。Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)を始めとする本格的なロボット企業がバック転をするロボットを作っていた時、マスクはロボットスーツを着た人間を連れてきたのだ。しかし、今も多くの人々がマスクに声援を送り、いつの日か家事を手伝ってくれるロボットを手頃な価格で販売してくれるのではないかと期待している。

ロボット工学分野で先行するトップ企業にテスラが追いつくまでの道のりが長いことは間違いないが、いつかマスクと彼のチームが追いつく可能性は十分にある。しかし、最新の動画で私たちが見ている技術は、ディズニーが60年前に作ったものからあまり進歩していない。マスクは、筆者が送ったメールの質問にまだ答えていない。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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