欧州

2024.03.06 12:00

ロシア軍の無謀極まる「ゴルフカート」攻撃、案の定悲惨な結果に

安井克至
重量51tのT-90や13tのMT-LBですら、ウクライナ側の大砲やドローンのキルゾーン(撃破地帯)を白昼、味方の支援なしに突破することは難しい。1.5トンのデザートクロスでは不可能だ。

それでも、歩兵を接触線まで輸送する手段がほかになく、犠牲をいとわない部隊は、デザートクロスのような車両を使う危険を冒すのかもしれない。そうでも考えなければ、ゴルフカートのような車両を戦闘に投入するなどという無分別な判断は理解できない。

ロシア軍は昨秋以来、ウクライナの前線全体で執拗に攻撃を続け、その過程で何千両もの車両を失っている。そのためロシアは装備に余裕があるような印象を受けるかもしれない。

実際はそうではない。オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「Oryx(オリックス)」によれば、ウクライナに展開している総勢50万人近くのロシア軍はここ数カ月、戦車やその他の戦闘車両を月に少なくとも500両失っている。

これに対して、ロシアの産業界はBMP歩兵戦闘車を年に400両あまり、T-72、T-90両戦車を年に合計でそれと同数くらいしか新造できていない。したがって、新規生産で補えない数千両の戦車やその他の戦闘車両は、旧ソ連時代の古い在庫を引っ張り出して賄っているのが実情なのだ。

これらの在庫には限りがある。現在のペースで損失が続けば、ロシアは1年半後には戦車やBMPが不足し始める可能性がある。だからこそロシア軍の指揮官たちは、残り数少ない装甲車両に続いて、ゴルフカートのような車両に歩兵を乗せて戦闘に向かわせたのだろう。

もちろん、事情は理解できても彼らの判断は正当化できるものではない。
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forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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