ある集計によると、2022年2月のウクライナ侵攻開始時、ロシア軍は2987両の戦車を運用していた。その後、ロシア軍は1年11カ月にわたる激戦で少なくとも2619両の戦車を失った。この損失は独立アナリストが確認したものだ。
ロシア軍が運用するT-55、T-62、T-72、T-80、T-90のうち、1725両が破壊され、145両が損傷し、205両が放棄され、544両が鹵獲(ろかく)された。
もしロシアが損失を埋め合わせる手段を持っていなかったなら、ロシア軍の戦車はわずか368両となっているだろう。ウクライナ軍の機甲部隊から防衛するには少なすぎる数だ。一方のウクライナ軍の戦車は、戦前に運用していたものに修復したり供与されたりしたものを加え、そこから損失分を差し引くと1000両程度になっている可能性がある。
しかし、ロシアには代替戦車の調達先がある。ロシア南部にあるウラルバゴンザボードの工場はT-90Mを生産しており、その他にも4つの工場が倉庫に放置されていた古い戦車の修理や近代化改修を行なっている。これらの戦車の中には何十年も倉庫で眠っていたものもある。
どの外部アナリストも明確に答えていない大きな疑問がある。それは、ウラルバゴンザボードは何両の戦車を生産できるのか、そして他の工場はどれくらいの戦車を修理できるのかということだ。
ロシアは、戦車の生産をおよそ3倍に増やす集中的な産業努力を行った結果、2023年に合計1500両の新しい戦車と近代化が施された戦車を受領したと主張している。それが本当なら(かなり疑問だが)、ロシア軍が2022年に受け取った新しい戦車と改修された戦車は500両程度とみなすのが妥当だろう。
侵攻前に運用していた戦車3000両から戦争で失った2600両を引き、そこに代替戦車の2000両を足すと2400両となる。ロシア軍は侵攻後に部隊を新設したため、それぞれの野戦軍や師団、旅団、連隊が保有する戦車は2022年以前より少ないだろう。
それでも2400両という数は、おそらく十分だ。つまり、戦争が「陣地戦」で、どちらの側も機甲部隊が敵陣の後方深くへと迅速に突破する戦略に賭けていない限り、十分なものだ。