欧州

2023.12.26 17:00

ロシア軍が謎の作戦 「人形部隊」載せた車両を前線に

ロシア軍のBMP-3歩兵戦闘車(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

ロシア軍の連隊が、BMP歩兵戦闘車に兵士を模したのダミーを多数載せ、ウクライナ東部ルハンスク州ビロホリウカ郊外の前線に向かわせたのは、なぜだったのだろうか?

連隊の人間以外、誰も確かなことはわからない。緑色のロシア軍の軍服を着たダミーを載せたBMPは、1年10カ月に及ぶロシアとウクライナの戦争における奇妙な謎の一つだ。


約1000kmに及ぶ前線の至る所で常時飛行し、てき弾を投下したり、爆発物を搭載して体当たりしてきたりするウクライナ軍の1人称視点(FPV)ドローン(無人機)の注意を引くことを期待したのかもしれない。

この戦争では、敵の大砲やミサイルを引きつけるために、両軍ともデコイの車両や航空機を用いている。ドローンの注意を引くためにデコイの兵士を展開してもおかしくない。

いずれにせよ、ダミー兵士を運んだ少なくとも2両のBMPが破壊された。このダミー兵士については、臆測が飛び交った。

発見したウクライナ軍の第81旅団も困惑を隠せなかったが、最終的には安全策を取り、BMPをダミー兵士もろとも爆破した


爆破にはてき弾を投下するドローンを用いた。もしダミーが本当にドローンの注意を引くためのものだったのなら、ほぼロシア軍の思惑通りに事が運んだことになる。

だが、それにかかったコストを計算する意味はある。ドローンのてき弾1個の価格はたったの数ドル。約450gの爆薬を搭載した重さ約900gのFPVを使った攻撃なら、500ドル(約7万円)かかるかもしれない。

ダミーはアマゾンで1体50ドル(約7000円)で販売されている。ウクライナ軍はそれを10体ほどと、数百万ドル(数億円)のBMPを2両爆破した。各BMPの乗員3人が生き延びたかどうかは不明だ。

ロシア軍といえども、ウクライナ軍にせいぜい数千ドルのドローン数機を無駄使いさせるために、生身の兵士6人を危険にさらしてダミー兵士を運ばせたりはしない──そう願いたい。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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