ロシア軍がなぜそうするようになったのかは明白だ。戦闘車両が歩兵分隊をその中や上に乗せて移動中に、ウクライナ軍の地雷やドローン(無人機)、砲撃、対戦車ミサイルを食らうと、爆発で乗員と兵員が全員死亡するおそれがあるからだ。
それに対して、歩兵が戦闘車両の後ろを歩いていくようにすれば、車両が攻撃を受けても歩兵は被害を免れる可能性がある。
デメリットは、当然のことながら機動力が落ちることだ。歩兵がついてこられるように、戦闘車両は徒歩と同じくらいのスピードで走行しないといけない。皮肉にも、そのために、先導する車両は前線へ向かう際に、攻撃側にとってより狙いやすい目標になるかもしれない。
また、歩兵にしてみれば、歩くのはやはり疲れるということもある。
独立分析グループのコンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)は最新のリポートで、ロシア軍の歩兵戦術のこうした変化に注目している。「ドローンから撮影された(ウクライナ南部ザポリージャ州の前線近くの集落)ロボティネ周辺の映像には、ロシア軍の歩兵が歩兵戦闘車の後ろを歩く様子が捉えられている。いわゆる『警察戦術』だ」
CITはこの移動方法について「対戦車誘導ミサイルやドローンの攻撃を受けた際に、歩兵を保護することが狙いなのかもしれない」と推測している。ウクライナ北東部ハルキウ市の近くで最近あった小規模な戦闘で、歩兵を車体の上に乗せたロシア軍の戦闘車両にウクライナ軍の対戦車ミサイル「ジャベリン」が撃ち込まれた事例を、CITは引き合いに出している。
誤解のないように言っておくと、車両で移動する歩兵である機械化歩兵は、接触線に到達すると必ず下車する。散開して各自の兵器を用いるためだ。
歩兵を前線まで輸送した戦闘車両は、歩兵の攻撃を火力支援するためにその場にとどまることもある。あるいは、対戦車兵器の脅威があまりに大きい場合などはいったん引き返し、歩兵の退避が必要になった場合に備えて安全な場所で待機することもある。