近づいて来るロシア軍の機甲部隊の騒音。重機関銃の耳障りな音、それに続くM2ブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)による日中の迅速な救出。救急車での搬送。
これらは、ウクライナ軍が防衛拠点を置く東部ドネツク州アウジーイウカの北側で起きた塹壕戦で、同軍の歩兵分隊が経験したことだ。この6週間、ロシア軍はアウジーイウカを制圧しようと、かなりの損失を出しながら決死の攻勢をかけている。あるいは制圧ではなく、単に破壊するだけだったかもしれないが。
ハイテク装備を誇る第47独立機械化旅団の、女性衛生兵を含む少なくとも2人の兵士は、ヘルメットに取り付けたカメラでこの小規模な戦闘を記録した。彼らが見たもの、そして経験したことは、何千人ものウクライナ兵士がはるかに大規模なロシア軍を相手に、アウジーイウカを保持するために戦う中で直面している過酷な現実だ。ロシア軍の指揮官らは自軍の兵士や車両の多大な損失を気にしていないらしい。
第47旅団の歩兵分隊が装甲トラックらしきもので自分たちの陣地へ急行したとき、あたりは暗かった。近くで銃声が鳴り響く中、車両から降りてきた歩兵たちは、寒くて泥だらけの戦闘陣地への入り口を探った。「塹壕の中へ!」とひとりの兵士が繰り返し怒鳴った。
夜が明けると、十数人の歩兵にとって塹壕がいかに危険だったかが明らかになった。塹壕は兵士たちが身をかがめられるだけの深さしかなかった。塹壕のある細い樹林は戦闘でズタズタにされており、四方は泥地が広がっていた。
第47旅団の兵士たちが、アウジーイウカのすぐ北、ステポべという集落の東にある、ウクライナ軍とロシア軍の陣地を隔てる幅800mほどの中間地帯に展開したのは明らかだ。ロシア軍は10月上旬以来、数千人の兵士と数百両の戦車や戦闘車両を、この身を隠すところがない平野に投入し、その多くを失った。
中間地帯に到達するためには、ロシア軍はウクライナ軍のドローン(無人機)と大砲の攻撃を切り抜けなければならない。ウクライナ軍の有名な砲兵指揮官であるアーティ・グリーンは「この方角に進む各隊列は、わが軍の複数の旅団から射程圏内にある」と語った。