攻撃は例によって失敗に終わった。だが、攻撃に参加したロシア兵の多くが生き残った。ウクライナ側の迫撃砲弾、擲(てき)弾、自爆型FPV(一人称視点)ドローン(無人機)が枯渇しているためだ。
「言っておかないといけないのは、われわれには弾薬が不足しているということだ」とウクライナ軍のあるドローン操縦士はソーシャルメディアで認めている。
ロシア側は今回、2つのチームで攻撃してきた。どちらも戦車1両とBMP歩兵戦闘車1両のペアだった。こうした小規模な部隊による攻撃は、ロシア軍による2カ月にわたるアウジーイウカ攻略戦の最近の傾向とも合致する。
軍事アナリストのトム・クーパーは18日、アウジーイウカ方面の先週の戦況について「ロシア軍の攻撃は継続しているが、強度は低下した」と評価している。「(攻撃の)波は減っている。波は以前は15〜20人の兵士から成っていたが、現在は6人に減っている」
霧がかかる中、ロシア軍部隊はさらに煙幕を張ったうえで、白昼、アウジーイウカに向けて突入してきた。
A short thread/update about one day on the South of Avdiivka near Vodiane.
— Kriegsforscher (@OSINTua) December 18, 2023
For the last 10 days in this part of Ukraine it’s foggy. Very foggy.
And at 15.12.23 RUAF decided to use weather conditions and attack positions of UAF🧵👇 pic.twitter.com/6obe6QFDDw
だが、ウクライナ側に幸運が訪れる。先導していた戦車が地雷を踏んだのだ。攻撃は頓挫した。「ロシア軍部隊は退却し始めた」と前出のドローン操縦士は説明している。「誰が最初に逃げ出したか。ご想像のとおり、戦車の乗員だった」
さらに、こちらもおそらく地雷が原因とみられるが、2つ目のチームの戦車とBMPも立て続けに行動不能になった。生き延びたロシア兵たちは、何もさえぎるものがない中を徒歩で急いで撤収した。
上空から監視していたウクライナ軍のドローンは、生き延びたロシア兵らの姿を克明に捉えていた。通常なら、ウクライナ軍の40mm擲弾やFPVドローンの格好の目標になっていたはずだった。
しかし「大隊の主要兵器である迫撃砲やMk19(擲弾発射器)用の弾薬がない」とドローン操縦士は嘆いている。使えるFPVドローンもなかった。「これがわれわれの砲兵の置かれている現状だ。われわれはドローンも常に必要としている」と訴えている。
ロシア軍が10月以来、アウジーイウカ周辺で出した1万3000人の死傷者と異なり、これらのロシア兵は陣地に無事生還できたようだ。「ロシア兵が罰を受けずに歩き去るのを見るのは虫酸が走る」とドローン操縦士は吐き捨てている。
米議会のロシア寄りの共和党議員らは、ジョー・バイデン米大統領がウクライナの戦争努力を支えるために提案している610億ドル(約8兆8000億円)の援助を滞留させている。
交渉は続けられているものの、上院は休会期間に入っており、再開は1月上旬になる。バイデン政権がこの予算を執行できないかぎり、ロシア兵たちはアウジーイウカ周辺で引き続き幸運に浴するかもしれない。アウジーイウカをすぐに奪うことはできなくても、生き延びてそれを試み続けるかもしれない。
(forbes.com 原文)