欧州

2023.12.17 12:00

アウジーイウカ攻防は「ドローン戦」に ロ軍、中隊を2日で35回攻撃

eleonimages / Shutterstock.com

ロシア軍は、ウクライナ東部アウジーイウカの防衛を支援しているウクライナ軍第53独立機械化旅団の1個中隊の陣地に向けて、爆薬を積んだFPV(一人称視点)ドローン(無人機)を2日間で35機も突入させた。

100人ほどの兵士が保持する陣地周辺に、900g程度の機体に450gほどの爆薬を載せたドローンが、82分に1回のペースで襲撃したということだ。

「ドローン戦争になっているわけですね」と、ウクライナ人の戦場記者ユーリー・ブトゥソウは、11月に行われたとされるインタビューで、ザムという第53旅団の中隊長に問いかけている。

「そうです」とザムは答えている。


第53旅団は今年春、アウジーイウカに配置された。アウジーイウカは、ロシア軍の支配下にあるドネツク市のすぐ北西にあるウクライナ軍の防御拠点だ。10月上旬、ウクライナ北東部のロシア野戦軍がアウジーイウカに攻勢をかけるため、戦車などの戦闘車両を周辺に集結させると、第53旅団は防御線に就いた。

2カ月にわたる攻撃で、ロシア軍はアウジーイウカの北と南でそれぞれ1.5kmかそこら前進し、最近は町の南東にある工業団地も占領した可能性がある。しかし代償は大きく、ロシア軍は車両を数百両失ったほか、米情報機関の推計では1万3000人が死傷した

損害が積み重なったことで、ロシア軍の指揮官は戦術を変更した。1カ月にわたってウクライナ側の地雷や砲撃、ドローン攻撃によって戦車やその他の戦闘車両を失い続けたあと、ロシア側は残存する車両の多くを温存し、歩兵を直接徒歩でアウジーイウカに向かわせるようになった。

ただ、これらの歩兵はウクライナ軍の戦車M2ブラッドレー歩兵戦闘車にまみえ、撃滅されることもあった。そこでロシア軍の指揮官は、空からの攻撃に重点を移し、さらに多くの自爆ドローンや、擲弾を投下する大きめのドローンを投入するようになった。

ザムによると、インタビュー当時は後者のような爆撃ドローンの飛来は少なくなり、代わりにFPVドローンが増えていた。FPVドローンによる攻撃があまりに多いので、第53旅団は陣地に向かってくるドローンの飛行経路で、ロシア側の操縦士を判別できるほどになっている。「飛ばし方で操縦士を見分けられます」とザムは言う。
次ページ > ロシア側に圧倒されないためには電波妨害装置を増やす必要がある

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事