欧州

2023.12.18 11:30

橋頭堡攻撃のロシア空挺師団「桁外れの大損害」 ウクライナは反攻の芽残す

ロシア軍の空挺兵。2018年5月、サンクトペテルブルクで(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

ロシア軍の空挺兵。2018年5月、サンクトペテルブルクで(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

ロシア空挺軍の第104親衛空挺師団は、ウクライナ南部ドニプロ川左岸(東岸)でロシア側の作戦を救援するはずだった。

ところが、新たに編成されたこの師団は「初の戦闘で桁外れに大きな損害を被り、目標の達成に失敗した」可能性が非常に高いと英国防省は分析している

2カ月前、ウクライナ海兵隊の第35海兵旅団の海兵たちはドニプロ川をボートで渡り、砲兵やドローン(無人機)、そして周到な電波妨害による掩護を受けながら、左岸沿いの集落クリンキに橋頭堡(きょうとうほ)を確保した。クリンキ一帯以外、ドニプロ川左岸はロシア軍が支配している。

クリンキ方面はこの戦争の新たな前線になった。ウクライナ側はロシア占領軍をウクライナ南部から押し出していくために、いずれここを有効に活用したいと考えている。

ロシア海軍歩兵隊の部隊は陸軍の自動車化連隊の増援を受けつつ、ウクライナの海兵部隊を駆逐しようとしたが、失敗した。そこで投入されたのが第104師団だった。第104師団は9〜10月に急いで訓練されたあと、ウクライナ南部に配置され、クリンキ方面の戦いを主導することになった。

通常は4個師団体制のロシア空挺軍は、ロシアが拡大して22カ月目になる戦争の初期に大きな損害を出していた。新編の第104師団はそれを埋め合わせるはずだった。

だが、2000人規模の第104師団もまた大きな損害を出し、消耗戦にさらに拍車をかける格好になった。「第104師団は航空戦力や砲兵による支援を十分に受けられなかったと伝えられ、兵士の多くは未熟だった可能性が非常に高い」と英国防省は指摘している。

クリンキや周辺の森林に現在、ウクライナの海兵が何人くらいいるのかはよくわからない。ロシア側の情報筋は、上陸部隊は200〜300人規模ではないかと推測している。

これら数百人の海兵部隊は、ドローン部隊や砲兵部隊、電子戦部隊とともに、数千人のロシア軍部隊に対して持ちこたえてきた。相手にしてきたのは、最初は第810海軍歩兵旅団の海兵、次に第70自動車化狙撃師団の兵士、そして第104師団の空挺兵である。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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