部隊が「遮蔽物の限られる開けた地形を移動する」場合や「敵の位置と方向が確認されている」場合は、戦車や歩兵戦闘車を先頭にした隊形のほうが適していると米陸軍は指南している。
ウクライナ軍の突撃部隊が戦車と歩兵の混成部隊の場合、こちらの隊形をとるのは有名だ。歩兵は戦車の上に乗って移動(「タンク・デサント=戦車跨乗」と呼ばれる)し、敵の小火器の射程内に入ると飛び降りる。戦車は射撃を行いながら前進し、歩兵はそのすぐ後ろをついていく。
敵の陣地まで数百mくらいまで来ると戦車は旋回し、歩兵が前方に飛び出して、手榴弾を投げたりライフル銃で射撃したりする。
ロボティネ郊外でウクライナ側が観察していたロシア軍部隊の機動は、こうしたものではなかったようだ。この部隊はたんに、車両や歩兵が同じミサイルや砲弾、地雷で全滅させられることなく、接触線までたどり着こうとしていた。
冬が深まり、ロシア軍はウクライナの1000km近くにおよぶ前線の大半で防衛から攻撃に転じつつあるが、攻撃するロシア軍部隊は戦闘に入ること自体がきわめて難しくなっている。
ロシア軍が2カ月にわたり続けてきたウクライナ北東部アウジーイウカ周辺での作戦がまさにそうだった。ロシア軍はまず、戦車やそれを支援するほかの戦闘車両でウクライナ軍のアウジーイウカ守備隊を攻撃しようと試みた。
しかしウクライナ軍の地雷や砲撃、ミサイル、ドローンによって戦車を100両以上、その他の戦闘車両を200両近く失った。そこで、ロシア軍は徒歩の歩兵による攻撃に切り替えた。戦闘車両は歩兵を前線から数百m以内の地点まで運び、そこで降ろして引き返すようになった。
この方法ですら、損害があまりに大きかったようである。だから今度は、歩兵に戦闘車両の後ろを歩かせるようにしたのだろう。少なくともロボティネ周辺ではそうしている。さらに今後、徒歩の歩兵を前線までエスコートする戦闘車両の損害も積み重なれば、ロシア軍の歩兵は単独で接触線まで歩いていき、徒歩で攻撃するようになるかもしれない。
とはいえ、攻撃を開始するのに十分近い場所まで、兵器や弾薬を携えて1.5〜3kmくらい歩いてきた時点で、歩兵がすでにどんなに疲れているか想像してみてほしい。しかも冬の比較的暖かい時期、ウクライナの東部や南部に広がる、糊のような泥の中を足首まで浸かりながら歩いていくとすれば、兵士はもっと疲れることになるだろう。
(forbes.com 原文)