サマータイムが導入されている国では年に2回、時刻を変更する。だが、それは一部の人たちにとって、非常に気が進まない作業だ。特に夏時間に切り替える(時計を進める)ことは1時間を失うことであり、大人だけでなく子どももペットも、あらゆるものが等しく影響を受ける。
米国では、時刻を変える日付は移動祝日のように毎年変わる。連邦政府が定める祝日のように必ず同じ日ではない。2007年までは毎年4月の第1日曜日だったが、現在は3月の第2日曜日となっており、この日からの1カ月が、睡眠啓発月間だ。
この制度については、与野党ともに廃止を巡って激しい論争を繰り広げており、多くの州がその実現を求めている(同じ状況が、EU加盟各国でもみられている)。そして、米国では正式に「時刻を固定」するため、2025年1月に共和党のリック・スコット上院議員(フロリダ州)が、超党派の「Sunshine Protection Act(日照保護法案)」を提出した。だが、その廃止は今のところ、実現していない。
ヒトは「習慣の生き物」
神経科学者のクローディア・アギーレ博士にとって、「ルーティーンは何より重要」だ。夜は自然な暗闇の中に身を置き、朝は明るい自然光を浴びる。それは目だけでなく、肌にとっても非常に役立つことだという。皮膚もまた、光の色を感知するからだ。
博士は、「夜はなるべくブルーライトに当たらないようにした方がいい」と話す。それは、体はいくつものプリズムを通して、朝ではないことを感知しているからだ。また、体が眠りにつきやすくなるようにするため、博士は日没後にはほとんど、またはまったく、人工照明を使用しないようにしているという。
ルーティーン(の重要性)を説明するのは、心的化学だ。博士は、「ルーティーンを維持していれば、脳はその後に起きることを予測することができます。私たちの脳は、予測することが何より好きなのです」と語る。
「睡眠でもチョコレートでもセックスでも何でも、これから起きることがわかっている状態が、脳にとっては最高なのです」
「十分に予測が可能な状態にあれば、脳内では(快感や多幸感をもたらすホルモンの)ドーパミンが多く放出されます。ルーティーンによって、脳はそうした状態により良く備えることができるようになります」