3日で4機のSu-34損失というのは、ロシアがウクライナで拡大して1年10カ月になる戦争で、ロシア空軍の1週間あたりの損耗率としては最悪の部類に入る。
ロシア側にとってさらに不都合なことに、ウクライナ空軍は折しも、オランダから引き渡されつつある米ロッキード・マーティン製(編集注:開発元は合併前の米ジェネラル・ダイナミクス)F-16戦闘機によって大幅に増強されようとしている。
ウクライナ空軍は22日正午ごろ、ヘルソン州のドニプロ川のすぐ南で3機のSu-34を撃墜した。3機は当時、ドニプロ川左岸(東岸)沿いの集落クリンキにあるウクライナ軍の橋頭堡に衛星誘導の滑空爆弾を投下するため、高高度を飛行していたもようだ。ドニプロ川の左岸はクリンキ一帯以外はロシア軍が占領している。
ウクライナ側が3機をどのように撃墜したのかははっきりしない。搭乗していた飛行士の大半は死亡したと伝えられる。注目されるのは、ウクライナが最近、3基目となるパトリオット地対空ミサイルシステムをドイツから受け取っていたことだ。
パトリオットのPAC-2型の最大射程は160kmに達し、ウクライナ軍が保有する防空ミサイルとしては最も長い。ロシア軍機はドニプロ川沿いの目標を滑空爆弾で攻撃するには目標から40km程度まで近づく必要があるので、パトリオットはヘルソン州の前線からかなり離れた場所からでも容易に迎撃できる。
10147/ A strike on the accumulation of the #AFU Summer 2023 is possible. pic.twitter.com/EIPj2p1Iq2
— Huligan (@Ghost132607472) December 18, 2023
ロシア軍はウクライナに全面侵攻する前にSu-34を150機弱保有していたとみられる。確認されている22日の3機撃墜によって、ウクライナでの損失数は計25機になった。24日の撃墜が事実だとすれば計26機になる。
双発・双座席のSu-34はロシア空軍にとって、センサーやアビオニクス(航空電子)機器、スマート兵器の組み合わせによって、不意に現れた目標を即座に探知・攻撃する能力をもつ唯一の戦闘爆撃機でもある。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャスティン・ブロンク、ニック・レイノルズ、ジャック・ワトリングは2022年11月のリポートで、ロシア空軍が「高価で複雑なこの航空機(Su-34)のさらなる損失を最小限に抑えようと努めるのはまず間違いない」と指摘していた。
当時、ロシア空軍は1機5000万ドル(約71億円)するSu-34をすでに17機失っていた。損失数は今では25〜26機と全体の5分の1近くに膨らんでいる。ロシア側の懸念がますます高まっているのは疑いない。
3機のSu-34が撃墜されたあと、ロシア空軍がクリンキの橋頭堡に対する滑空爆弾攻撃を少なくとも一時的には停止したらしいのは、理由のないことではないのだ。
シベリアのノボシビルスクにあるチカロフ航空工場は、Su-34を年に数機しか製造できない。つまり、ロシアはSu-34現在のような損耗率には耐えることができない。ウクライナ空軍のF-16が実戦投入され、Su-34の損耗率がさらに上がれば、それに耐えられないのはいうまでもない。
(forbes.com 原文)