欧州

2023.12.25

ウクライナ軍、南部でSu-34爆撃機3機を連続撃墜 ロシア空軍に最悪級の損害

ロシア空軍のSu-34戦闘爆撃機。2012年8月、モスクワ郊外ジュコフスキーで=シャッターストック

ウクライナ空軍は22日、南部のヘルソン州で、ミサイルによる待ち伏せ攻撃でロシア空軍のスホーイSu-34戦闘爆撃機3機を撃墜した。ロシアがウクライナで拡大して22カ月目になる戦争で、ロシア空軍にとって1日では最悪の部類に入る損害だ。

「ロシア軍の爆撃機、マイナス3」──。ウクライナ空軍のミコラ・オレシチュク司令官はフェイスブックで戦果を軽妙に報告した

今回の待ち伏せ攻撃は、ウクライナ南部における空戦の転機になる可能性がある。ヘルソン州では10月上旬、ウクライナの海兵隊部隊が広大なドニプロ川をボートで渡る渡河作戦を敢行し、左岸(東岸)沿いの集落クリンキに橋頭堡を築いた。ヘルソン州のドニプロ川左岸は、クリンキ一帯以外はロシアの支配下にある。

ウクライナ側は効果的な電子戦によって、クリンキ上空で局所的な航空優勢を少なくとも短期間は確保し、ロシア側のドローンを飛べなくした。しかし、地域全体では依然としてロシア軍が制空権を握ってきた。ロシア空軍のSu-34は連日出撃し、クリンキの橋頭堡へ向けて40kmほど離れた地点から衛星誘導の滑空誘導爆弾を投下してきた。

重いものでは1tを超える滑空誘導爆弾は予告なしに殺害する。「命中すれば(即死して)何も感じないとわかっているので、いちばん怖くない」。オレクサンドルというウクライナ兵は地元メディアのキーウ・インディペンデントにそう語っている。

3機の撃墜に関して、ウクライナ国家安全保障国防会議のオレクシー・ダニロウ書記は地元ラジオの取材に、滑空爆弾を搭載するスホーイを仕留めるため「長い時間」をかけて準備してきたと明かしている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11月25日、ヘルソン州の西に位置するオデーサ州に「非常に強力な防空」システムを配備する準備を進めていると述べていた。

その2週間後、黒海西部の上空でロシア軍のスホーイSu-24戦闘爆撃機が撃墜された。このSu-24は港湾都市のオデーサか、ドナウ・デルタのウクライナ側の河川港を攻撃しようとしていたとされる。撃墜に使われたミサイルは特定されていないが、S-300PS地対空ミサイルシステムから発射されたものだった可能性がある。

同じころ、クリンキを滑空爆弾で攻撃しようとしていたロシア軍のSu-34が、ヘルソン州のウクライナ側の防空システムによって撃墜されたという噂もあった。その真偽はともかく、ロシア側に対するより大きな打撃は1カ月後にもたらされることになった。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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