ウクライナのドローンはそこで、士気の低いロシア兵2人と交戦する。その時に起きたこともまた、おそろしく殺伐としたものだった。ロシアがウクライナで拡大して3年目に入り、おびただしい血が流されてきた戦争の縮図とも言えるような出来事でもあった。
恐怖、臆病、裏切り、冷酷、そして吹き飛ばされる頭──そんな話だ。
擲弾で武装したウクライナ国家警備隊のドローンは、ウクライナのおよそ1000kmにおよぶ前線のどこかで、ロシア兵2人が浅い穴ぼこにいるところを見つける。
国家警備隊が先ごろソーシャルメディアに投稿した映像(編集部注:鮮明な動画が含まれるため閲覧注意)を見るかぎり、兵士は2人きりだったようだ。ロシア軍のほかの部隊の姿は見えない。低空を飛行しているこのドローンに対処する防空兵器や電波妨害(ジャミング)装置もない。
2人はドローンがいることに気づいている。1人は穴の斜面の下あたりで横向きに伏せ、怯えた様子で頭をかばっている。もう1人の兵士は平然と座っていて、たばこを吹かしている。そして、ドローンのカメラ越しにウクライナの操縦士に目で合図を送り、身を伏せている兵士のほうを指差す。
《俺じゃなく、あいつを殺(や)れ》
ドローン操縦士はひとまずそれに従う。たばこの兵士がそばで見守るなか、ドローンは身を伏せた兵士の真上に擲弾を投下する。爆発で兵士の頭部が吹き飛ばされる。
ドローンが持っていた擲弾は1個だけだったのかもしれない。たばこの兵士は、擲弾が怯えた兵士に落とされれば、自分は助かると考えたのかもしれない。あるいは、ドローンは擲弾を2個以上積んでいて、たばこの兵士は道義に反してでも、少しでも長く生き延びようと必死だったのかもしれない。
いずれにせよ、ウクライナの無慈悲なドローン操縦士はこの兵士も見逃さなかった。同じドローン、あるいは任務を託された2機目のドローンが、たばこの兵士に対する攻撃態勢をとる。
兵士は片足を痛めているらしく、片足をかばうようにしてゆっくり立ち上がり、数歩進む。そこにドローンから擲弾が落とされ、兵士の足元で爆発する。
映像にカットが入っているので少しばかり時間がたったあととみられるが、前回と同じドローンか予備のドローンがやって来て、動かなくなったこの兵士の上にさらにもう1発、擲弾を投下する。彼が裏切った戦友が数分前に見舞われたのと同じように、この兵士も頭部を吹き飛ばされる。