一方、ウクライナ側の戦車の損害は14両にとどまっている。
ロシアがウクライナで拡大して23カ月目になる戦争で、ロシア軍は3度目の冬の攻勢をかけている。そのなかでもとりわけ激しい戦闘が繰り広げられているアウジーイウカ攻防戦は、ロシア軍の装甲部隊にとって「罠」のようなものになっている。ウクライナ側にとっては、ロシア軍を消耗させる機会になっているということでもある。
新しい戦車の生産や長期保管していた古い戦車の再利用、2022年に出した装甲車両の大きな損害を補う必要性なども踏まえると、ロシア軍が前線の戦車数を現在の3000両ほどの水準で維持するには、月あたりの損耗数を50両かそこらに抑える必要がある。
だが、ロシア軍はアウジーイウカ周辺だけでも戦車を月に60両失っている。その数は、ロシア軍の第239戦車連隊が戦闘に投入され、先行する戦車部隊が粉砕されたのと同じ地雷原、あるいは火砲とドローン(無人機)によるキルゾーン(撃破地帯)に接触するにつれて、もっと増えるかもしれない。
アウジーイウカ方面に展開しているロシアの野戦軍(第2諸兵科連合軍と第41諸兵科連合軍)は、2023年10月に大きな損害を被ったあと、装甲車両を後方にとどめ、歩兵を徒歩で送り込むようになった。
その歩兵たちも殲滅された。地雷や火砲、ドローンによる攻撃を生き延びた兵士の前には、ウクライナ軍の第47機械化旅団とその米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車が待ち構えていた。掩護のない歩兵たちは、M2の25mm機関砲によって大鎌で刈られるように掃討された。
ロシア軍の第2、第41諸兵科連合軍は現在、さらに多くの戦車をアウジーイウカ方面に投入することを計画しているもようだ。ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)は「第90戦車師団の第239戦車連隊がアウジーイウカの南西に集結しつつある」と3日に報告している。