欧州

2024.03.04 13:00

ロシアは戦闘機も捨て駒に? ウクライナ軍、1日1機ペースで撃墜続ける

ロシア空軍のSu-34戦闘爆撃機。2015年、モスクワ郊外ジュコフスキーで(Kosorukov Dmitry / Shutterstock.com)

ウクライナ空軍は2日、ロシア空軍のSu-34戦闘爆撃機を新たに2機撃墜したと発表した。ウクライナ側が過去2週間に撃墜したと報告したロシア軍機は、これでSu-34が12機、Su-35戦闘機2機、ベリエフA-50早期警戒管制機1機の計15機に達した。

ウクライナ軍による未曾有の連続撃墜は、ウクライナ側の防空部隊の勇敢さと技能、そしてソ連時代の古いレーダーやミサイルと西側の最新レーダーやミサイルを組み合わせた独自の統合防空システムの有効性を示すものである。

一方で、その裏には、できるだけ早い間にできるだけ大きな損害をウクライナ側に与えようとロシア側が躍起になっているという事情もある。ウクライナ側がこれほど多くのロシア軍機を撃ち落としているのは、ロシア側が軍用機の爆撃任務の出撃をかつてないほど増やしていることが一因だ。

ウクライナの軍事アナリスト、アレクサンドル・コバレンコによると、ロシア空軍は2月29日、ウクライナの前線でSu-34やSu-35、Su-25攻撃機に計150回あまりの爆撃任務を行わせた。これより前にロシア軍機による爆撃が最も激しかったのは全面侵攻直後のキーウ方面への進撃時だったが、ロシア軍機によるこの日の1日の延べ任務回数は当時をさらに10回ほど上回り、過去最多になったもようだ。

各スホーイは計数トンの爆弾やミサイルを搭載しており、ウクライナ軍の地上部隊にとって深刻な脅威になっている。半面、これらのスホーイは地上のウクライナ軍部隊の攻撃目標にされる。「ロシア軍機の飛行がこれほど集中的に実施されているからこそ、私たちはロシア軍機をより頻繁に仕留めることができている」とコバレンコは解説している。

1日150回超にのぼる爆撃任務の大半は、ロシア空軍に100機かそこら残存しているSu-34によって行われている。ロシア空軍の典型的な攻撃任務には、衛星誘導の滑空爆弾を各4発搭載したSu-34(複座)2機と、空対空ミサイルや対レーダーミサイルを搭載した護衛のSu-35(単座)1機が参加する。

ロシア軍が爆撃に用いているのは、重量500kgか1500kgの粗雑なFAB航空爆弾に衛星誘導装置や展開型の翼を付けた「UMPK」という滑空誘導爆弾だ(編集注:ウクライナ側では「KAB」とも呼ばれている)。Su-34は高速で突っ込んで高度を上げ、最長約40km先の目標に向けてこの爆弾を発射できる。命中精度もそこそこ高い。

スホーイは40km離れていれば、最も軽い部類の対空兵器に対しては十分に射程圏外ということになる。しかし米国製のパトリオット地対空ミサイルシステムや旧ソ連で開発されたS-200地対空ミサイルシステムなど、より重量級の対空兵器の場合は十分に射程に入る。

もっとも、出撃したスホーイのほとんどは爆弾を投下して無事基地に戻っている。この2週間の平均でも、ウクライナ側は前線近辺に出撃してきたロシア軍機全体の100分の1以下しか撃墜できていない。

生き残っているロシア軍機は24時間で計100発以上の滑空爆弾を投下できる。コバレンコは2月29日に過去最多の152発を記録したと報告している。

これらの滑空爆弾には、1発で掩蔽壕を粉砕したり建物を倒壊させたりできるほどの炸薬が詰め込まれている。滑空爆弾は市街地の破壊兵器の1つだ。ウクライナ東部の激戦地だったアウジーウカ方面を増援したウクライナ軍第3独立強襲旅団の軍人イーホル・スハルは、この爆弾は「どんな陣地も完全に破壊してしまう」と述べている
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翻訳・編集=江戸伸禎

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