欧州

2024.03.06

ロシア軍の無謀極まる「ゴルフカート」攻撃、案の定悲惨な結果に

Shutterstock.com

前面も横も開放され、装甲もない全地形対応の車両、ありていに言えば頑丈なゴルフカートを、前線から400mほどしか離れていないところで戦闘に投入するのは、狂気とまでは言わずとも無謀だ。

だが、正気を失っているとまでは言わなくとも思慮に欠けるのが、ウクライナで戦争を拡大して2年あまり経つロシアの軍隊の指揮官たちである。おそらく数日前、ウクライナ東部ドネツク州ヤムポリウカ村であった攻撃はその一例だ。

攻撃は、ロシアの占領下にあるウクライナ東部ルハンシク州クレミンナの西方のこの村で、ウクライナ軍の第60独立機械化旅団が保持している陣地に対して、ロシア軍の第488親衛自動車化狙撃連隊の所属と思われる部隊が仕かけた。

少なくとも1両のT-90戦車のほか、MT-LB装甲牽引車とみられる車両などからなるロシア軍の車列は、ヤムポリウカへ向けて西に進撃した。こうした攻撃自体は珍しいものではない。珍しかったのは、この車列に含まれていたほかの車両だ。

数両のデザートクロス1000-3全地形対応車である。85馬力のこの中国製車両を見かけるのは普通、工事現場や農場だ。戦場に乗り込むために使われるような車両ではない。だから装甲も付いていないし、武器も装備していない。

ウクライナでの車両の損失が1万両を超えたロシアは昨年、1両およそ1万7000ドル(約250万円)のデザートクロスを2100台購入し、ウクライナに送り込んだ。ロシア軍がこれらの車両を後方地域で多用途車として使うのならわかる。だが、それに歩兵を乗せて突撃に従事させるというのは常軌を逸している。

ロシア軍の指揮官たちはそれをやった。そして、予想どおりの結果になった。突撃部隊がウクライナ側の最も外側の陣地から400mかそこらまで近づいてきたところで、第60旅団はクラスター爆弾を撃ち込み、さらに爆薬を積んだドローン(無人機)で攻撃した。

爆撃で立ち込めた煙が収まると、そこにはロシア兵の多数の遺体と、破壊されたT-90とデザートクロス数両が無惨な姿をさらした。
次ページ > 無謀な攻撃の裏に見え隠れするロシア軍の車両不足

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事