これはロシア側が耐えられる水準をはるかに上回る損失ペースだ。国際的な制裁の影響で、ロシアの航空宇宙産業は新たな軍用機を年に25〜35機程度しか生産できていない。
ロシアは補充できるペースの十数倍の速さで軍用機を失っているという計算になる。
ウクライナ国防省は27日、今月9機目と10機目のロシア軍機撃墜を発表した。いずれもSu-34だった。「おっと、またやってしまった!」ソーシャルメディアで10機目の撃墜を発表した際にはそう軽妙に書き込み「これで10日で10機のロシア軍機を破壊したことになる」と戦果を誇った。
ウクライナ側がどうやってこれほどの数のロシア軍機を撃ち落としているのかはよくわからない。ウクライナ空軍は米国製パトリオット地対空ミサイルシステムの一部を機動防空グループに配備しているのかもしれない。
このグループは前線のかなり近くまですばやく移動し、射程140km超のPAC-2ミサイルでロシア軍機を待ち伏せ攻撃したあと、すぐにその場を離れ、反撃を回避しているのかもしれない。
23日にあったA-50の撃墜では、より射程の長い兵器が使われたと考えられる。当時、A-50は前線から200km近く離れた辺りを飛行しており、PAC-2では届かないからだ。この攻撃で使用されたのは、冷戦時代に開発され、長期にわたって保管されていたあと、再び就役したS-200地対空ミサイルシステムだった可能性がある。
ウクライナ空軍は、射程40kmのNASAMS地対空ミサイルシステム二十数基の一部も前線に展開させているもようだ。これは、うち1基が26日かそれ以前に南部ザポリージャ市近郊でロシア軍に発見され、ミサイルで撃破されたことで裏づけられた。ウクライナ軍のNASAMS発射機の損失は初めてだった。
ウクライナの防空部隊による連日の戦果は、これらの兵器やほかの防空兵器をこぞって投入し、しかも積極的に運用している結果というのが実情なのかもしれない。このやり方にリスクあるとすれば、パトリオットやNASAMS用のミサイルが米国製だという点だ。米国からウクライナへの弾薬やミサイルの供与は、米議会下院のロシア寄りの共和党議員らの妨害で昨年末に完全に途絶えている。
ウクライナ側の最高の防空ミサイルはいずれ枯渇する。その日は近いかもしれない。