欧州

2024.02.29 16:00

ウクライナ、ロシア軍機を10日で10機撃墜 持ちこたえられない甚大な損失に

一方、ロシア側の行動(あるいは必要な行動がとれないこと)も航空機の損失拡大につながっている可能性がある。ロシア軍は2週間ほど前、人員と装備に途方もない損害を出した末に、弾薬不足に苦しんでいたウクライナ東部アウジーウカの守備隊をついに敗北させた。以後、やはり米下院共和党のせいで弾薬が枯渇している各地のウクライナ軍守備隊を押し込んでいる。

好機とみたロシア空軍は前線近くへの出撃を増やし、滑空爆弾を発射してウクライナ軍部隊を抑え込み、ロシア軍の地上部隊の前進を支援している。ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)は「敵は戦場の真上で航空機を使うことへの恐れを克服した。これは航空機の損失をもたらしている半面、地上部隊は火力面で大きな優位性を得ている」と解説している

ロシア軍機の攻撃任務のための出撃が急増したために、ウクライナ側の防空部隊の迎撃目標も増え、その結果、撃墜数も増えたと推測できる。

また、ロシア軍機のパイロットがウクライナ側のミサイル発射機をますます見つけにくくなっていることも、ウクライナ側による迎撃をしやすくしている。ロシア空軍はもともと、ウクライナ全域をセンサーでカバーするためにA-50を9機かそこら必要としていた。南部、東部、北部の各方面をそれぞれ3機ずつのローテーションで担当するためだ。

だがウクライナ側は昨年、ロシア空軍のA-50のうち1機をドローン(無人機)による攻撃で損傷させたのに続き、今年に入り2機を撃墜し、センサーの探知可能範囲の3分の1を削った。その結果、ロシア側には探知の「死角」ができており、ロシア空軍のパイロットは接近してくるミサイルに気づきにくくなっている可能性がある。

ウクライナ側は米国製ミサイル、ロシア側はSu-34やSu-35、A-50と、それぞれすぐには代替できないリソースを費やして、長期的な優位性を確保すべく短期的な作戦を展開している。

ウクライナ空軍は、残り数少ないパイロットやNASAMSを用いてロシア空軍を消耗させ、今後、爆撃のための出撃が急増するのを防ごうとしているとみられる。一方のロシア空軍は、スホーイ飛行隊が航空機や熟練搭乗員の不足で疲弊する前に、さらに多くのウクライナ軍守備隊に爆撃を加えて屈服させ、ロシア側の地上部隊の前進を支援する構えだ。

こうした難局を打開する力を持つ人物が1人いる。マイク・ジョンソン米下院議長だ。彼のみが下院で法案を採決にかけられる。

米上院はウクライナへの600億ドル(約9兆円)規模の新たな援助案をすでに承認している。それにはきっと多数の防空ミサイルも含まれるだろう。ジョンソンがこの案をきょうにでも採決にかければ、超党派の賛成多数で可決されるに違いない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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