政治

2024.02.29

NATOがウクライナに派兵すれば紛争拡大は「必然」 ロシア大統領府

Getty Images

ロシア大統領府(クレムリン)は27日、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナに地上軍を派遣すれば、必然的に現在の紛争が拡大することになると警告した。フランスのエマニュエル・マクロン大統領はこの前日、ウクライナへのNATO軍の派遣を否定しないと発言していた。

ロシア国営タス通信によると、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、NATOがウクライナに軍隊を派遣した場合、ロシアとの衝突は「可能性ではなく、必然性の問題になるだろう」と警告。NATO諸国はその影響も考えるべきだとした上で「ウクライナに特定の部隊を派遣する可能性を議論しているという事実そのもの」こそ、ロシアが気付いた「極めて重要な新しい要素」だとけん制した。

フランスの首都パリでウクライナ支援に関する会議に出席したマクロン大統領は26日、ロシアの戦勝を阻止するために、ウクライナへの軍隊派遣も含め「排除すべきものは何もない」と述べた。他方で、NATO内ではこの問題を巡る意見が一致していないことも認めた。

これに対し、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は「ウクライナにNATOの戦闘部隊が駐留する計画はない」と明言。匿名で米CNNの取材に応じたNATO関係筋も、同機構はすでに「前例のない軍事支援」を行っているとして、ウクライナに軍隊を派遣する「計画はない」ことを明らかにした。NATOの主要加盟国もマクロン大統領の発言を否定している。米AP通信によると、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、NATO諸国からウクライナに「地上部隊を派遣することはない」と述べ、英ロイター通信は、ポーランドのドナルド・トゥスク首相とチェコのペトル・フィアラ首相も、NATOによるウクライナへの部隊派遣を否定したと伝えた。英国のリシ・スナク首相も、ウクライナに「大規模な派兵」をする計画はないと述べた。

NATOはこの2年間、ウクライナ侵攻に直接関与することを避けてきたが、加盟国は軍事支援を行ってきた。ウクライナはロシアによる侵攻開始から7カ月後にNATOへの加盟を申請。これに対し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナのNATO加盟目標が侵攻の背景にあると主張した。ウクライナは10年以上前からNATOへの加盟を模索しており、NATOは2008年に同国が将来的に加盟すると宣言したが、加盟には既存のすべての加盟国が批准する必要があり、実現にはほど遠い。

NATO条約には、加盟国に対する攻撃は「すべての加盟国に対する攻撃と見なす」という条項があり、ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアとの対立を大きく広げることになる。その際、加盟国はウクライナを守る必要があり、現在進行中のロシアとの紛争は欧州と北米にまたがる全加盟国に拡大する。

ストルテンベルグ事務総長は今週初め、ウクライナのNATO加盟はもはや「仮定の話ではなく、いつになるかの問題だ」と説明した。「加盟国が合意し、条件を満たせば」ウクライナの加盟を認めるとの誓約をNATOが起草したと報じられたことを受け、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、その条件が明確でないとして非難した。同大統領は、ウクライナが戦争中にNATOに加盟することはできないと理解しているとしながらも、同国の加盟は「実現する」という「明確な兆候」があると強調した。これを受け、米国のジョー・バイデン大統領は「戦争が続いているのなら、私たちは皆戦争中だ」と述べた。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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