健康

2024.02.25

「所得の差」と「がん発症リスク」との相関を発見、オランダの調査

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過去30年間で、米国と西ヨーロッパ諸国におけるがんによる死亡率は低下してきた。検診と治療の改善がその減少の主な理由である。しかし、がんは依然として欧米で2番目に多い死因だ。さらに言えば、所得の差はがんの罹患率や死亡率の差と相関しているようである。現在進行中のオランダの全住民を対象とした研究によると、ほとんどの癌の罹患率は低所得者層ほど高い。

特に肺がんは、所得の低い人ほど罹患率が高い。Comprehensive Cancer Organization(包括的がん協会)のオランダ人研究者によると、肺がんは最も所得の低い層の男性では2〜3倍多く発症しているという。

他のすべてのがんを調査した結果、研究者たちは、所得に依存した罹患率の差はわずかであると結論づけた。このパターンは女性にも男性にも見られる。

顕著なのは、高所得者ほどメラノーマ(悪性黒色腫)のリスクが高いことである。この所見に寄与していると思われる要因には、皮膚がんに対する認識が高いこと、日光への露出が多いこと、日焼けサロンの利用が多いことなどがある。

さまざまな種類の癌の危険因子は、所得水準によって均等に分布しているわけではない。例えば、所得が高い人ほど、HPVワクチン接種のようなプログラムや、大腸内視鏡検査のような癌の早期発見を目的とした集団検診に参加する傾向がある。

オランダの低所得者は、所得の高い人に比べて平均7年短命であることが知られている。がんの罹患率を高める原因と、この平均寿命の差の原因には共通する部分がある。例を挙げると、所得の低い人は喫煙量が多く、運動量が少なく、太りすぎの傾向がある。教育水準が低いことも原因の一つだ。
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翻訳=江津拓哉

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