平均寿命から調べてみよう。『The Equality of Opportunity Project(機会均等プロジェクト)』のデータによれば、最高所得層の米国人男性は最貧層の男性よりも15年長生きし、最高所得層の米国人女性は貧困層の女性よりも10年長生きしている。注目すべきは、過去20年間で、貧富の差が時間とともに急速に拡大していることだ。
次に、がんに目を向けると、米国のCenters for Disease Control and Prevention(疾病対策予防センター)によると、貧困水準以下で暮らす人々の肺がん罹患率は、中流階級の所得を持つ人々よりも著しく高い。また、裕福な人と比較すると、その差はさらに拡大するという。
2018年に医学雑誌の『JAMA Network Open(JAMAネットワークオープン)』に発表された研究では、米国にある約3000の郡を対象にした分析の結果、平均所得水準の異なる郡ではがん死亡率が大きく異なり、10万人当たりの年間平均がん死亡率は高所得郡で185.9、低所得郡で229.7であった。
オランダの研究者たちと同様に、この米国の研究者たちは、格差を説明する一連の媒介因子が類似していることを指摘した。喫煙習慣、肥満、運動不足などである。米国の研究では、医療の質とコスト、食の不安、医療へのアクセスといった側面も加わっている。これらの要因が、がん死亡における所得関連の格差の80%以上を占めると言われている。
がんの罹患率と死亡率の乖離は、スコットランドのような一見最も平等な医療制度を持つ国でさえも見られる。BBCによると、スコットランドでは経済的に最も恵まれない地域で、がんによる死亡率が61%高い(2023年の調査結果)。また、2023年に診断されたがんの数は、豊かな地域に比べて貧しい地域では27%多かった。
このような格差はそれぞれの国で見られるが、国と国とを比べてみても同じことが言える。例えば、比較的豊かではない東欧諸国では、米国や西欧諸国よりもがん死亡率が高いと言われている。
がんの罹患率や死亡率の格差は、平均余命と同様に、貧しいことが健康に悪影響を及ぼすことを如実に物語っている。
(Forbes.com原文)