欧州

2024.02.05 11:30

砲弾不足のウクライナ、ロシアの大砲集積許す 集中砲撃で東部の町壊滅

ロシア軍の2S7Mマルカ自走カノン砲。2020年8月、モスクワ州アラビノで(volkova natalia / Shutterstock.com)

ロシア軍の2S7Mマルカ自走カノン砲。2020年8月、モスクワ州アラビノで(volkova natalia / Shutterstock.com)

昨年12月下旬、ウクライナに対する米国の援助が底をつき、ウクライナの戦争努力向けにジョー・バイデン米大統領が議会に求めている610億ドル(約9兆円)の追加予算案の採決を米議会のロシア寄り共和党議員らが拒んだとき、この「背信」の影響を真っ先に受けることになったのはウクライナ軍の砲兵部隊だった。

ウクライナ軍が使う榴弾砲やロケットランチャー、そしてその弾薬の主要な供与国は米国だったからだ。

昨年の夏には、ウクライナ軍の砲兵部隊は砲弾の発射数でロシア軍に対して優勢とは言わないまでも互角だった。だが、現在はロシア側が5倍の差で圧倒している。具体的に言えば、ロシア軍は砲弾を1日に約1万発発射しているのに対して、ウクライナ側は約2000発程度にとどまっている。

その結果、ここへ来てロシア軍の砲兵部隊は調子づいているようだ。ウクライナ側から反撃される危険にわずらわされなくなったロシア軍の砲兵部隊は、前線の都市にあるウクライナ側の陣地に対して壊滅的な集中砲撃を加えるために、最大クラスの大砲や発射機を集積させるようになっている。

ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは、ロシアがウクライナで拡大して23カ月目になる戦争の1000km近くにおよぶ前線の衛星画像を分析し、こうした動向をつかんでいる

「1月だけで敵軍の砲兵火力・兵力の集中を14以上記録した」とフロンテリジェンス・インサイトは報告している。「私たちの分析では、この復活はロシア軍の間で恐怖心が低下していることを示唆する。恐怖心の低下はウクライナ側で再燃した弾薬不足に促された可能性がある」

フロンテリジェンス・インサイトは一例として、ウクライナ東部ルハンスク州の接触線から約8km離れたリシチャンスク郊外で、大砲や車両のための掩体(えんたい)が20カ所近くあると指摘している。

1年前なら、ロシア軍は前線にこれほど近く、これほど狭いエリアに、これほど多くの重火器を屋外に集積する危険はまず冒さなかっただろう。そうすれば、ウクライナ軍の射程約25km弱のM777榴弾(りゅうだん)砲や、同90km強の高機動ロケット砲システム(HIMARS)によって粉砕される恐れがあったからだ。

だが、大砲やロケット砲の弾薬が減っているウクライナ軍は、防衛線の突破を図るロシア軍部隊やその車両を攻撃するという最も差し迫ったニーズのために、手持ちの砲弾やロケット弾を節約せざるを得なくなっている。

「残念ながら、こうした状況はロシア側に、よく知られたアプローチの実行を許す」とフロンテリジェンス・インサイトは説明する。「市街地を組織的に破壊し、防御不可能にする」というやり方だ。
次ページ > ロシア軍の多くの大砲はウクライナ軍の頼みの綱であるドローンが届かない場所で運用されている

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事