ウクライナ側にとって幸運だったのは、ロシアの歩兵らがツァルスカ・オホタへの侵入に使ったとみられる下水道から出てきたところを、ウクライナ軍のドローン操縦士が発見したことだ。「(ロシア兵らは)常人には思いつかない行動をしました」とウクライナのドローンチーム「ホルナグループ」のドローン操縦士は動画で解説しながら皮肉っている。
「糞まみれになりながらツァルスカ・オホタ地区に這い上がってきたロシア兵たちは、アウジーイウカの郊外で日向ぼっこをしようとしています」とドローン操縦士は続ける。彼らには強力な火力支援がなく、ホルナグループのすばしっこいFPV(1人称視点)ドローンに狙われるや身を守ることはできなかった。
ロシア兵の1人は崩れた家屋に身を隠そうとする。それをウクライナのドローンが追いかけて突っ込み、爆発する。「奴は瓦礫の中でそのまま腐っていくでしょう」とドローン操縦士は淡々と語っている。
ロシア軍が、長期にわたる攻撃で膨大な犠牲を出した末に、アウジーイウカの廃墟からウクライナ軍の守備隊を押し出すのに成功する可能性は依然としてある。それはアウジーイウカを迂回・遮断するか、市の南郊から進撃するかによってだろう。
だが、たとえ成功したとしても、それをロシア軍による「勝利」と表現するのはもはや難しいだろう。ロシア側はドネツク市のすぐ北西に位置するアウジーイウカまで支配地域を広げたところで、せいぜい数km前進したというにすぎない。一方で人員の損失は数万人に達しているかもしれない。
この点で、エストニア国防省が先ごろ、ウクライナ軍が2024年にロシア軍に10万人の死者・重傷者を出させれば、ロシア軍の即戦能力の下方スパイラルを引き起こせると分析しているのは注目に値する。アウジーイウカ攻防戦で、ロシア軍は今年すでに1万人規模の損耗を被っている可能性がある。
(forbes.com 原文)