欧州

2024.02.01

ウクライナ支援でバイデンが「奥の手」 ギリシャなどから三角スキームで武器送る

旧ソ連で開発された9K33オサー地対空ミサイルシステム。2022年4月、ロシア・サンクトペテルブルクで(Pavel Sapozhnikov / Shutterstock.com)

「三角取引」。この言葉をよく覚えておいてほしい。米国のジョー・バイデン大統領はこの方式によってウクライナに武器を届け始めている。

最初はエクアドル。そして今、ギリシャとそれを進めている。

三角取引とは要するに、突き出し方式で第三国に武器を融通するスキームだ。ある国が相手国に代金を支払うか武器を供与し、それによって相手国から第三国に武器を供与できるようにする。

ウクライナへの武器支援で、この方式のパイオニアはドイツである。ドイツ語で「Ringtausch」(「循環取引」といった意味)と呼ばれるこのスキームを通じて、ドイツはウクライナに武器を送り出してきた。主だったものを挙げれば次のようなものがある。

・チェコ:ドイツはチェコにドイツ製レオパルト2戦車(14両)と工兵車両(1両)を提供し、チェコはウクライナに旧ソ連製T-72戦車(数十両の可能性)を譲渡

・ギリシャ:ドイツはギリシャにドイツ製マルダー歩兵戦闘車(40両)を提供し、ギリシャはウクライナに旧ソ連製BMP-1歩兵戦闘車(40両)を譲渡

・スロバキア:ドイツはスロバキアにドイツ製レオパルト2A4戦車(15両)を提供し、スロバキアはウクライナにBMP-1(40両)を譲渡

・スロベニア:ドイツはスロベニアに軍用大型トラック(45台)を提供し、スロベニアはウクライナにスロベニア製M-55S戦車(28両)を譲渡

古い武器の在庫が膨らんでいる米国は、いずれドイツを抜いて三角取引の最大のブローカーになる可能性がある。それには十分すぎるほどの理由がある。米議会でこの4カ月、極端派のマイク・ジョンソン下院議長率いるロシア寄りの一部共和党議員が、ウクライナの戦争努力を支援する米政府の610億ドル(約8兆9000億円)の新たな支援予算を妨害し続けているからだ。

バイデンと部下のアントニー・ブリンケン国務長官は知恵を絞った。そして、おそらくドイツを手本に、議会の制約を受けない、大統領のもつ広範な軍事援助に関する権限を行使して、ウクライナ以外の国に武器を供与し、その国からウクライナに武器を譲渡してもらう取り組みに乗り出した。

1月上旬、エクアドルのダニエル・ノボア大統領は、米国から2億ドル(約290億円)相当の新しい武器を受け取る代わりに「スクラップ」兵器を米国に譲渡するとラジオ局のインタビューで明らかにした。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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