もっとも、ウクライナ軍が現在、戦闘可能なレオパルト2を用意するのに苦慮しているのは、撃破による損失が主な理由ではない。ウクライナ軍のレオパルト2の損耗では、撃破、つまり二度と戦闘で使えないほど完全に破壊されたものよりも、損傷にとどまるものが多い。ウクライナ軍は、これら損傷した戦車を修理して前線に復帰させるうえで問題を抱えているのだ。
レオパルト2は攻撃を受ければすぐ終わりになるような戦車ではない。乗員4人、重量70トンのこの頑丈な戦車は、被弾しても修理を施せば前線に戻ることができる。「被弾→修理→前線復帰→被弾……」というサイクルで繰り返し使用できる戦車なのだ。
つまり、レオパルト2は再生可能なリソースだ。ただ、整備士がこのリソースをどれだけ早く再生できるかは、もっぱら部品の入手しやすさにかかっている。そして、ウクライナ軍のレオパルト2では部品の入手が難しい状態が続いているのだ。
ウクライナ軍は昨年夏に反転攻勢を始めた時点で、レオパルト2A4を50両、装甲を強化したスウェーデン版レオパルト2A5のStrv(ストリッツヴァグン)122を10両、追加装甲や、より砲身の長い120mm滑空砲を装備したレオパルト2A6を18両保有していた。
レオパルト2A4は南部方面の第33独立機械化旅団、Strv122は東部方面の第21独立機械化旅団、レオパルト2A6は南部方面の第47独立機械化旅団にそれぞれ配備された。第47旅団はのちに、北東部の激戦地アウジーイウカ方面への増援に送られている。
3旅団は反攻を進めるなかで、ロシア軍の地雷やドローン(無人機)、砲撃、ミサイルによって戦車を失った。レオパルト2A4は少なくとも7両、レオパルト2A6は4両、Strv122は1両が撃破された。
差し引きするとウクライナ軍には59両のレオパルト2が残っていることになるが、実際はそのうち数十両が修理できずに使えない状態になっている可能性がある。今月、ドイツのテレビ放送局n-tvのクルーがウクライナ軍のレオパルト2A6の小隊を現地で取材した時、この小隊が運用する戦車4両のうち戦闘可能なものは1両だけだった。