防護
BAEシステムズ(編集注:英BAEシステムズの米国子会社)が手がけるM2は重量30t、乗員3人で、ほかに歩兵7人が乗り込める。鋼鉄とアルミニウムのその装甲は、30mm徹甲弾(貫通力の高い砲弾)を止めることができる。爆発反応装甲(「ブラッドレー爆発反応装甲タイル=BRAT」と呼ばれる)を追加すれば、30mmサボ弾(装弾筒=サボ=を付けて貫通力をさらに高めた砲弾)も防ぐことができる。ロシア軍の歩兵戦闘車であるBMP-2やBMP-3よりも高い防護力だ。BMP-2が耐えられるのは23mm徹甲弾までで、しかも砲塔正面に限られる。BMP-3はM2と同様に30mm徹甲弾に耐えうるものの、やはり砲塔正面のみだ。
BRATをまとえば、RPG-7(携帯式の対戦車擲弾発射器)などから発射される成形炸薬弾や、弾頭に成形炸薬を用いた旧式の対戦車ミサイルに対する防護力も高まる。
M2は地雷からの防護のため車体底部の前面に9mmのプレートも装着されている。また、地雷に接触した際に中の歩兵への衝撃を軽減するため、歩兵用の7つの座席は側面や天井に取り付けられている。内部には、破片の飛び散りを抑えるスポールライナー(飛散防止の内張り)も施されている。
こうした手厚い防護を備えるため、M2は優れた医療後送車両にもなっている。1年前に米国から約200両供与されたM2をウクライナ軍で独占的に運用する第47独立機械化旅団が、M2を救急車両としても使っているという報告例はいくつもある。
機器
M2は第2世代のサーマルビジョン(熱赤外線可視化)システム「SADA-II」を搭載する。夜間や暗所で視界を得られる同じ暗視装置は、ウクライナ軍に供与された31両の米国製M1A1エイブラムス戦車にも採用されている。SADA-IIは8km先の目標を1インチあたり1316ピクセル×480ピクセルの解像度で検知できる。M2にはさらにレーザー測距器やGPS(全地球測位システム)も搭載されている。
M2の車長は砲手が見ているものを見て、自分で目標を攻撃することもできる。ただし車長専用の暗視装置はなく、さらに言えば日中用の視覚装置ももたない。車長が自分で外界をのぞく手段は、砲塔のハッチの周囲に8つ設けられた透明ブロックのペリスコープ(潜望鏡)に限られる。
ロシア軍は暗視装置のないBMP(BMP-1、旧型のBMP-2とBMP-3)を使い続けている。したがってM2とBMPの戦いでは、M2がたいてい先に、またどのような時間帯であってもBMPを見つけられる。