欧州

2024.01.16 10:00

ロシア軍の最新兵器「AIドローンキラー」、ウクライナのドローンに破壊される

Shutterstock.com

ロシアが高度な電子戦システムを開発し、ウクライナの前線に配備する。ウクライナはそれを大砲や爆弾、ドローン(無人機)で攻撃し、すぐに失わせる──。危ういことだが、これはロシアがウクライナで拡大した戦争で新たな慣例になりつつある。

先週、それが再び繰り返された。ロシア軍の非常に新しく、非常に貴重なRB-109Aブィリーナ電子戦指揮統制システムを、ウクライナのドローンチーム「シャドー」が探し出し、爆破した。

ブィリーナは、5台のトラックに積載された一式の高度な受信機で、敵のレーダーや無線機を見つけ出して位置を特定する。また、内蔵する人工知能(AI)によって、連動する電波妨害(ジャミング)装置に自動で合図を送り、レーダーや無線機を妨害させる。受信機は数百km離れた電波発信装置を探知できる。

つまりブィリーナは電波妨害装置ではなく、電波妨害装置の効果を高めるAI搭載指揮システムである。ある評価によれば、ブィリーナによって電波妨害装置の効果は最大50%向上するという。

電子戦は、この戦争で現在、最も重要な「戦線」だと言ってもいい。小型の自爆ドローンは最も重要な兵器の1つになっており、それが目標に命中するかどうかは敵の電波妨害次第だからだ。

ウクライナ南部のドニプロ川左岸(東岸)でウクライナ海兵隊の小規模な部隊が狭い橋頭堡を保持できているのも、ウクライナ側の電波妨害作戦が功を奏しているからだ。海兵隊側は一帯でドローンを飛ばせるが、ロシア側はドローンを飛ばせなくなっている。

また、ロシア軍がウクライナ東部の都市アウジーイウカを落とせていないのも、ロシア側の電波妨害作戦がうまくいっていないことによる面が大きい。ウクライナ軍の守備隊はドローンを飛ばし、攻めてくるロシア軍部隊に群がらせている。

ロシア軍が昨年秋、徐々に実戦を想定したものになっていた数年間のテストを経て、ブィリーナを初めて実戦投入したのは当然の成り行きだった。ブィリーナは「最適な電波妨害装置を選択し、敵の信号の妨害を容易にする」(ロシア政府)はずだった。
次ページ > ロシア軍は、妨害・防御する当の対象に兵器を破壊される失態が相次いでいる

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事