欧州

2023.11.29 10:00

ウクライナが手にしたM1戦車、米軍仕様の「究極版」と判明

遠藤宗生

米カリフォルニア州のエアショーで披露された米海兵隊のM1A1戦車(Glenn Highcove / Shutterstock.com)

ウクライナ軍が運用する米国製のM1A1エイブラムス戦車を以前より鮮明にとらえた写真がここ数日、ソーシャルメディアに相次いで投稿されている。26日には、3枚目となる最新画像が出回った。この画像には、2006年製のM1A1のあまり知られていない特徴がはっきりと写っている。

画像の砲塔右側(写真の右ではなく、戦車から見た右手)に写っている戦車長用のM2重機関銃をよく見てみると、台座に球状のセンサーが取り付けられていることがわかる。これはM1A1のスタビライズド・コマンダーズ・ウェポン・ステーション(SCWS)用赤外線暗視装置だ。



この装置のおかげで、車長は厚い装甲で守られている砲塔の外に出ることなく車外を見渡し、機関銃を撃つことができる。これはM1A1の究極版となる米軍仕様モデルに搭載された新機能だった。M1A1自体は1980年代に採用されたM1の改良版だ。

米陸軍は現在、後期型のM1A1を国家警備隊のいくつかの旅団に配備し、連邦軍は最新のM1A2を使用している。ウクライナには、輸出が禁止されているウラン装甲の代わりにタングステン装甲の31両のM1A1が米陸軍の在庫から送られている。

米国が最終的に追加で多くのM1をウクライナに供与するというのはあり得る。米国は重量67トン、乗員4人のM1を何千両も保管している。

M1A1のSCWSを手がけたのはミシガン州の企業メリル・テクノロジーズ・グループだ。同社によると、M1A1のSCWSは「直接ボルトで留めるタイプのソリューション」で、最小限の労力でM1の既存の車長ハッチにはめ込むことができる。

現代の戦車の多くには、車長用の遠隔操作式の無人銃架があり、通常は重機関銃が装備されている。その多くは360度の視界が確保でき、車長が機関銃を撃つために砲塔から頭を出す必要がないよう、遠隔操作の引き金を備えている。

M1のSCWSが特別なのは、安定していることと、赤外線カメラの追加により砲塔内のディスプレイに車外の映像が表示されることだ。これにより、車長の機関銃は24時間いつでも、煙が立ち込めていたり雨が降っていたりという状況でも使える。走行中でも機能する。

米海兵隊が運用する戦車向けに車長用の遠隔操作式の無人銃架の改良を手がけたシステムエンジニアのジェームス・シェイファーは「赤外線暗視装置は24時間使用できる」「低照度でも視界を確保でき、悪天候下の多様な環境でも機能する」と説明した

周囲がはっきり見えれば、車長は指揮がしやすくなる。海兵隊は「戦車の車長にとって状況認識は重要だ」と述べている。米陸軍がM1A1にスタビライザー付きの車長用の照準器と暗視装置を装備したものを「状況認識(SA)」モデル、M1A1SAと呼んでいるのにはそれなりの理由がある。

forbes.com 原文

次ページ > X(旧ツイッター)で出回っている画像

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事