欧州

2023.11.28 10:30

ロシアの希少な歩兵戦闘車、次々にウクライナ軍が鹵獲

遠藤宗生

BMP-1AM歩兵戦闘車(Dianov Boris / Shutterstock.com)

ウクライナ東部ドネツク州ウロジャイネの東にあるウクライナ軍の陣地を狙ったロシア軍第37独立自動車化狙撃旅団による中途半端な反撃は、23日にウクライナ軍第3、第58旅団に遭遇し、失敗に終わった。

この短い戦闘は当初、特に大きな注目を浴びなかった。同州では、数個の旅団と連隊を擁するロシアの野戦軍が、アウジーイウカを守るウクライナ軍部隊への攻撃で数千の車両を投入している。ロシア軍がアウジーイウカの作戦でこれまでに失った戦車や戦闘車両は数百両にのぼり、おそらく数千人の兵士が犠牲になった。

だが、ウロジャイネ郊外の戦場から撤退したロシア軍は、少なくとも1つの興味深い置き土産を残したようだ。それは、無傷のBMP-1AM歩兵戦闘車(IFV)だ。ウクライナ軍の第58旅団は、重量15トン、乗員と歩兵合わせて11人が乗り込めるBMP-1AMの写真をソーシャルメディアで披露した。

明確にしておくと、ロシア軍の第37旅団が23日にBMP-1AMを放棄したと断定はできない。そうでないとすれば、その直前だっただろう。10月上旬にネット上に出回った同旅団をとらえた写真には、これと同じ車両、あるいは似たような車両が写っていた。

BMP-1AMは、1960年代に数多く生産されたBMP-1の希少な派生型の1つだ。BMP-1は古いにもかかわらず、ロシアがウクライナに仕掛けた1年9カ月に及ぶ戦争で、ロシアとウクライナの双方で最も多く使われている戦闘車両の1つとなっている。旧ソ連は装甲の薄いBMP-1を何万両も生産した。

BMP-1の最大の問題は、防御の弱さに加え、主砲が73mm低圧滑空砲であることだ。この砲は反動が少ないという利点があるが、標的までの距離が数百mを超えると精度が落ちる。BMP-1の主な改良版のほとんどが、73mm砲をより威力のある機関砲に換装したり、73mm砲の上か後ろに機関砲を追加したりしているのには理由があってのことだ。

2018年に初めて公開されたBMP-1AMの主な特徴は、装輪式IFVのBTR-82Aから借用した30mm機関砲だ。ロシアの産業界はBMP-1AMが輸出限定となると予想していたが、ロシア政府は2019年に自軍向けにBMP-1AMを発注した。

2020年時点でロシア軍が保有するBMP-1AMはわずか37両だった。その後、昨年2月にウクライナに侵攻するまでの間にロシアが何両生産したかはわからない。数十両かもしれないし、もっとたくさんかもしれない。いずれにせよ、ウクライナでの1年9カ月に及ぶ激戦の末、ロシア軍は少なくとも32両のBMP-1AMを失い、これとは別にウクライナ軍は8両をほぼ無傷な状態で鹵獲(ろかく)した。

このペースでいくと、ウクライナ、ロシア両軍が機能するBMP-1AMを同数保有するということもあるかもしれない。ウクライナ軍のBMPを運用する能力は疑わなくてもいい。ウクライナ軍全体で広く使用されていないBMP-1AMの部品はない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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