欧州

2023.11.27 10:00

ロシア軍、ドローン電波妨害装置を車両に取り付け ウクライナから学ぶ

Dmytro Larin / Shutterstock.com

ドニプロ川を渡ってロシア軍に占領されている左岸(東側)に橋頭堡(きょうとうほ)を築くのに成功する前、ウクライナ軍は南部へルソン州で戦うために数週間かけて準備した。

その準備は電子的なものだ。

ウクライナ軍は、ロシア軍のジャマー(電波妨害装置)を標的にしながらポータブルのジャマーを設置し、渡河作戦の目標地点であるクリンキ集落の上空にロシア軍のドローン(無人機)が安全に飛べないゾーンを作り、部分的な制空権を確立した。

ロシア軍は今、まず電波妨害を行うというウクライナ軍の戦略から学んでいる。ロシア軍の攻撃部隊は、リュックに入ったジャマーのスイッチを入れて移動することが多くなっている。ジャマーが実際に機能しているかはわからない。だが、ロシア軍が試みていることは注目すべきだ。

この新しいジャマー戦術について最初に報告したのは、エストニアのオープンソース・インテリジェンス(OSINT)のアナリスト(@wartranslated)だろう。ロシアがウクライナに仕かけて1年10カ月近く経つ戦争でのロシア軍の戦い方を解説している。

「ますます多くのロシア軍の部隊が携帯型のジャマーを使っている」と、情報筋はこのアナリストに語った。情報筋は、少なくとも3両の破壊されたロシア軍の車両を撮影したウクライナ軍のドローン映像から切り出した画像も共有。各車両には、背負うことができるジャマー用のアンテナ、あるいはリュックに入れられたジャマーそのものが取りつけられていた。

攻撃中に大破したロシア軍の2両のMT-LB装甲けん引車にその様子が表われている。いずれも、リュックに入れられたジャマーが文字どおり車体にくくりつけられている。「MT-LBには襲撃中にジャマーが取りつけられた」と情報筋は説明した。

ジャマーは明らかにMT-LBを救えなかったが、だからといって、ジャマーが周辺にいたウクライナ軍のドローンの飛行を妨害するのに完全に失敗したことを意味するわけではない。車両が地雷を踏んだり砲撃を受けたりし、ウクライナ軍の監視ドローンが車両の被害の程度を調べるために現場に到着する前にジャマーのバッテリーが切れた可能性もある。

リュックに入ったジャマーは一時しのぎのものだ。ロシアの産業界が用途がはっきりとしている車両搭載型ジャマーの生産を拡大する間、四六時中飛んでいるウクライナ軍のドローンからある程度保護できるかもしれない。800mを超える範囲でドローンの指令信号を妨害できるとされているジャマー「ヴォルノレス」を搭載したロシア軍の戦車が前線沿いにどんどん現れている。

ジャマーは万能ではない。開発者らは、無線回線が妨害されている間は自律飛行に切り替えたり、妨害の試みに先駆けて無線周波数をすばやく変えたりする、妨害をものともしないドローンの開発に取り組んでいる。

ウクライナはこのほど、航続距離32kmの新型ドローン「バックファイア」を発表。デジタル変革相のミハイロ・フェドロフは「妨害はほぼ不可能だ」と主張した。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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