これは何ら不思議ではない。約500kgの弾頭と慣性誘導を備えた重量2トン、最大射程120kmのトーチカは、単段の固体燃料エンジンを搭載している。ロケットの固体燃料は長持ちしない。
開戦後、1年にわたる激戦で、ウクライナ軍は使用可能な状態にあったトーチカをほぼ使い果たした。今年夏には、ウクライナ軍で唯一のトーチカを装備する部隊である第19ミサイル旅団がトーチカを発射した形跡を見ることは稀になっていた。
それから半年後、トーチカが戦場に帰ってきた。11月中旬、ロシア西部ベルゴロド州で見つかったウクライナ軍のトーチカの残骸を写した1枚の写真がネット上に出回った。国境からロシア側に数kmほど離れたところにある軍事目標へのロケット攻撃未遂を示すものだ。伝えられたところによると、その2日前にはロシアが占領しているウクライナ東部ドネツク州に展開するロシア軍を狙った別のトーチカ攻撃があった。
ウクライナ軍がトーチカの発射を再開したことも不思議ではない。ウクライナは長い間、欧州で最大級のロケット産業を擁していた。国営企業のユージュマシュが南部ドニプロに持つ広大な複合施設では、宇宙産業や軍事用のさまざまなロケットやロケット部品を生産している。
トーチカが最も盛んに製造されていた1970年代から1990年代にかけて、主にロシアの機械工学設計局(KBM)がトーチカの生産を手掛けていた。だが、ユージュマシュはソ連崩壊後、トーチカの部品を独自に製造することに何の問題もなかった。
⚡️The 🇷🇺Russians report the operation of the 🇺🇦Ukrainian operational tactical missile complex Tochka-U in the Belgorod region near the village of Rovenki. pic.twitter.com/bJyBa7pu7g
— 🇺🇦Ukrainian Front (@front_ukrainian) November 19, 2023
しかし、ユージュマシュの複合施設が稼働しているのは明らかだ。ユージュマシュはロシア軍に狙われた施設を再建したか、分散させたか、あるいはその両方を行った。ウクライナ国防省は6月、フリム2の生産準備が整ったと主張した。場所はおそらくドニプロだ。
トーチカは精巧な作りのミサイルではない。ユージュマシュが宇宙に打ち上げるロケット用の大型エンジンを生産できるのであれば、それよりずっと小型で単純な構造のトーチカを修理したり、あるいはゼロから製造できないはずはない。
旧ソ連軍はウクライナに何百ものトーチカを残していったため、ユージュマシュが利用できる古いロケットの筐体はいくらでも転がっていたはずだ。
なぜウクライナがわざわざトーチカの在庫を補充するのかは明白だ。フランス製や英国製の空中発射巡航ミサイル、米国製の地上発射M39ロケット、そしてネプチューン巡航ミサイルやS-200地対地弾道ミサイルといった国産のミサイルなど、ウクライナ軍の深部攻撃能力は着実に拡大しているにもかかわらず、これらの兵器に対する需要は供給を優に上回っている。
ウクライナ軍が前線からずっと離れた場所にある飛行場や工場、橋、兵站部を攻撃すればするほど、前線で戦わなければならない装備の整ったロシア軍の部隊数は減る。
(forbes.com 原文)