第44独立機械化旅団である。ロシアがウクライナで拡大した戦争が3年目に入ろうとし、初冬の泥濘期で戦線が膠着しつつあるなか、ウクライナ軍が進める戦力造成でモデルとなり得る部隊だ。
新たに編制された第44旅団の主要装備となるレオパルト1A5とポーランド製のKTOロソマク歩兵戦闘車は、来年にかけてウクライナで大量に使われるようになる見込みだ。ドイツとオランダ、デンマークのコンソーシアムはこれまでに、1980年代に製造されたレオパルト1A5をウクライナ向けに200両近く確保している。これらは企業によって再整備されたあと、訓練用にまずポーランドに送られ、その後、前線用にウクライナに引き渡される手はずになっている。
重量25トンで8輪式のロソマクのほうは、ポーランドがウクライナに200両の供与を確約している。ポーランド語で「クズリ」を意味するこの俊敏な戦闘車両は、生産の増強も進められており、ウクライナに追加で供与される可能性もある。つまりウクライナは、数個旅団に配備できる数のレオパルト1A5とロソマクを近く入手できることになっている。
ただ、これらの旅団の車両は装甲の防護は手薄ということになる。レオパルト1A5は主砲に105mmライフル砲を搭載し、そのために迅速で精確な射撃統制システムも備える半面、装甲は最も厚い部分でも70mmしかない。1年9カ月にわたるこの戦争で使われている戦車としては、最も防御力が低いものと言っていいかもしれない。
ロソマクも効果的な30mm機関砲を擁する一方、ポーランドの設計者は水上も移動できるようにしたかった。そのため軽量化を図った分、装甲は少なくなっている。
第44旅団の車両は、ソ連式の戦車を運用している数十個の旅団や、今夏の南部反転攻勢に向けて北大西洋条約機構(NATO)諸国供与の装備を配備された10個かそこらの旅団の場合と比べても軽装甲になる。この点は、大規模な攻撃行動をしようとする場合に響くかもしれない。
とはいえ、来年1月か2月ごろに泥が乾いてきたあと、ウクライナ軍が攻撃行動を再開できるかどうかを決めるのは、車両数百両の装甲の多寡ではないだろう。
ウクライナ軍が抱える大きな問題は、砲弾、地雷偵察、戦場での統率力の3つだ。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャック・ワトリングとニック・レイノルズはウクライナ軍の2023年の反攻に関する考察で、「どのような攻撃行動でも火力の優位性が前提条件になる」と書いている。
ウクライナ軍の砲兵部隊は頻繁に砲弾不足に陥っているにもかかわらず、ロシア軍の砲兵部隊に対して局所的に火力優勢を確保してきた。「これはロシア軍の火砲の対砲兵能力に対する目くらましと、精確な長距離火砲システムの活用によって達成されている」とワトリングとレイノルズは解説している。
ふたりはその上で「全体としての砲廠向けに弾薬生産と予備品を適切に調達して、こうした優位の持続可能性を確保することがきわめて重要だ」と述べている。