砲弾の安定した調達に加え、ウクライナ軍は、機甲部隊による攻撃で最大の障害になっている地雷を探知し、撃破もしくは回避する技術と戦術も必要だ。「地雷はウクライナ軍の車両の機動能力を制約している」とワトリングとレイノルズは指摘している。
「大規模な攻勢をかける前には、装備の損失が許容できないほどかさんでしまわないように、(地雷偵察を)徹底的に行うことが必要になる」と両者は説明。だが、ウクライナ軍は地雷偵察を「徹底的にできておらず、下車した工兵に頼ることも多い。そのため、ウクライナ側の陣地のすぐ先にある(ロシア側の)防衛線を越える作戦を立案するのは非常に難しくなっている。言い換えると、前方への突破口を利用するのは難しい」と分析している。
ワトリングとレイノルズはこうした状況を踏まえ、「(ウクライナへの)支援では地雷探知のための装備や技術に重点を置くべきだ」と提言している。それには、地雷を探知できるドローン(無人機)、工兵作業用の重器材、工兵の訓練などが含まれるかもしれない。たぶん、これらが大量に必要だろう。
しかし、砲弾と地雷除去装備があっても、ウクライナ軍の旅団が作戦での「勝利」と呼び得る結果に向けて、ほかの部隊と連携してそれらを適切な時期と場所で使用できなければ、それらは用をなさないだろう。
それらが用をなすのに欠かせないのが統率力だ。「訓練を受けた参謀将校の活用に限界があるため、ウクライナ軍の部隊にとって作戦立案は依然として大きな課題になっている」とワトリングとレイノルズはみている。「(ウクライナ軍は)民間人の動員によって急激に拡大した結果、部隊数のほうが参謀数よりも多くなっている」
有能な参謀将校は、米欧によるウクライナへの巨額の軍事援助のリストには含まれない。参謀将校はドラマチックな写真の対象になるわけでもない。自国第一主義者や侵略を是認するような政治運動は、自由で民主的なウクライナに反対する際に戦車やその他の戦闘車両をシンボルにするかもしれないが、参謀将校をそうすることはないだろう。
参謀将校は砲弾や地雷除去能力と同じくらい重要だ。たしかにウクライナの旅団がドイツなどから戦車を、ポーランドから歩兵戦闘車を大量に取得しつつあることは、ウクライナの支援国にとっても喜ばしいことである。
だが、欧州から供与される砲弾100万発や、NATOの工兵学校を卒業した工兵1000人、あるいはどこかの掩蔽壕で地図をのぞきこむ賢い大佐や少佐数十人は、そうした車両以上に喜ばしいものになるだろう。
(forbes.com 原文)