欧州

2024.01.14

自走砲の「砲身」が足りないロシア軍、古いけん引砲から取り外して再利用

ロシアの2S19 ムスタS自走りゅう弾砲 (Shutterstock)

北朝鮮から大量の砲弾が送られてきたおかげで、ウクライナで戦うロシア軍の部隊は砲弾に余裕がある。

余裕がないのはりゅう弾砲の砲身だ。そして、ロシア軍が使い物にならない砲を解体することによって、最も活躍している砲を維持していることが明らかになっている。

りゅう弾砲の砲身は通常、鋼鉄がもろくなったり曲がったりするまでに数千発は発射できる。 適切な時に消耗した砲身を交換しなければ、砲弾が砲の内部で爆発して大惨事になりかねない。このような事態は、ウクライナで1年11カ月にわたって繰り広げられてきたこの戦争の両陣営で幾度となく発生している。

ロシア軍の砲手にとって、計算は容赦のないものだ。約1000kmに及ぶ前線に沿って配備されているロシア軍のりゅう弾砲は2000門ほどだろう。これらの砲は1日に少なくとも計1万発を発射している。

平均すると1門あたり1日にたったの5発だ。このペースであれば、りゅう弾砲の砲身は1年強もつはずだ。だが実際には、前線の最も重要な方面の砲は平均よりはるかに多く発射し、一方で戦闘が少ない方面の砲は発射回数が少ないと考えられる。

ウクライナ東部のアウジーイウカやバフムート、南部のクリンキ周辺に展開するロシア軍の砲兵隊は、数カ月ごとに砲身を交換する必要があるだろう。

砲身の生産には高品質の鋼鉄と精密な機械加工が求められる。ロシアがウクライナに侵攻する前、ロシアで砲身を生産できる工場はペルミのモトビリハ工場とボルゴグラードのバリカディ工場の2つだけだった。ロシアが新たな生産施設を設立したのか、代替の砲身の調達先を外国に確保したのかは不明だ。調達先は北朝鮮かもしれない。

いずれにせよ、現在のように高頻度のペースで大砲を撃ち続けるために必要な、何千もの交換用の砲身をロシアが生産するのに苦労しているのは明らかだ。
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翻訳=溝口慈子

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