国防総省の監察総監がまとめた報告書の編集済み版によると、米国とパートナー諸国からウクライナに送られたおよそ16億9000万ドル(約2450億円)相当の兵器のうち、10億ドルあまりの在庫管理が「未処理」となっている。政府のデータベースで当該在庫について「完全な説明責任を果たせない」ことが原因とみられるという。
報告書は、兵器の追跡をおろそかにすれば「盗難や流用のリスクを高めかねない」と警告する一方、ウクライナ向け兵器の追跡は今後、在庫状況が変化していくなかでさらに難しくなるとの見通しも示している。
サーシャ・ベーカー米国防次官(政策担当)代行は、要求される会計処理の手続きは「戦時下の厳しく、変化の激しい環境では現実的でない」と述べている。
米紙ニューヨーク・タイムズが入手した編集前の報告書によれば、これまでに米国からウクライナに供与された兵器数は3万9139点にのぼる。適切に追跡されていない兵器の正確な数は不明だという。
米国務省によると、ロシアが2022年2月にウクライナに全面侵攻して以降、米政府はウクライナに442億ドル(約6兆4100億円)超の軍事援助を行っている。ニューヨーク・タイムズは、米国からウクライナに供与された兵器には対戦車ミサイルや地対空ミサイル、ドローン(無人機)、中距離ミサイル、暗視装置などが含まれると報じている。
国防総省の監察総監は2022年10月のリポートで、西側諸国からウクライナに供与された兵器の一部が犯罪者や義勇兵、密売業者に盗まれたと警鐘を鳴らしていた。ウクライナでの米国の軍事的プレゼンスは限られるため、米国からウクライナに送られた装備品を国防総省が追跡する能力は「難題」に直面しているとも認めていた。
CNNが当局者の話として伝えているところでは、ジョー・バイデン米政権はウクライナに送る兵器に関して、一部が適切な相手の手に渡るのであれば追跡不能なものが出るのもやむを得ないと判断しているという。
米議会では、野党・共和党がウクライナ向け追加予算の成立を滞らせている。議会の民主、共和両党の指導部は今週、2024会計年度(2023年10月〜2024年9月)予算の大枠で合意したと発表したが、交渉はなお続いている。
(forbes.com 原文)