働き方

2024.01.10

【Web特別寄稿】日本が「高賃金化」を達成するために必要な4つの仕掛け

Forbes JAPAN 2024年2月号 (70ページ〜)「新卒年収710万円」実施も 日本が高賃金かを目指す方法 に登場の田尻望氏がWeb読者向けに特別執筆した記事を紹介しよう。

田尻氏はキーエンスにコンサルティングエンジニア職として在籍した後に独立、経営コンサルタント「カクシン」を設立。

「平均年収2000万円超」のキーエンスに在職した氏が提案する「高収益高給与」実現法とは?



先日、ある日本企業の給与に関して、衝撃的な話を聞きました。京都大学を卒業し、有名な某大手総合電機メーカーに就職した入社3年目の社員(開発職)の年収が、わずか300万円だというのです。月収にすると25万円です。社会保険料などを引かれたら、おそらく手取り額は月20万円を切るでしょう。京都大学を出て大企業に入社したのに、いったいどういうことなのでしょうか?

なぜ日本は賃金を上げることができないのか? 

なぜ日本の平均賃金は低いままで「高賃金化」が難しいのか? 

次の図は、同じ100億円の売上をあげている2つの会社を比較したものです。この図を見たとき、あなたはどちらのほうが良い会社だと思いますか?


パッと見て、利益が15億円出ている右の会社のほうが良い会社のように見えるはずです。つまり一般的に、同じ売上に対して原価・販管費を抑えることができ、利益が多いほうが良い会社と見られるのです。

では、「賃金」はどこに入るのでしょうか? そう、販管費に入ります。

多くの人は、「会社が高収益になって利益が出れば、給与も上がる」と思っています。しかし、この2つの図を見てわかるように、実際には「高収益化」と「高賃金化」は、本来、相反するものです。つまり、

利益を上げたければ、賃金は下げたほうがいい(そして株価が上がる)
賃金を上げると、利益は下がることになる(そして株価も下がる)

というのが経営における基本的な考えかたであり、この考えかたのもと(ほかにもさまざまな理由はあるにせよ)、日本では「賃金をめぐって、労使が対立する」という構造を生み出してきたのです。

キーエンスで学んだ「賃金の高めかた」

私は、この対立構造に終止符を打つべく、次のような考えかたを提唱しています。

それは、「1人1時間あたりの付加価値生産性を高め、高収益、高給与を同時に実現する」です。(※そのための具体的な方法=キーとなる仕組みについては、後半で説明します)

これは、現在私がコンサルタントとしてさまざまなクライアント企業に提供し、大きな成果を出している「付加価値」をテーマとした「価値主義経営」のコンセプトを凝縮した結論であり、高賃金化を実現するための、たった1つの方法と言っても過言ではありません。そして、そのコンセプトの多くは、私がかつて新卒で入社し、4年間在籍したキーエンスという会社で学び、培った考えかたや手法がベースとなっています。

キーエンスはファクトリー・オートメーション用センサーなど、さまざまな機器を開発・製造販売している企業であり、「従業員の平均年収2000万円超」「社員1人当たりの営業利益額1億円超」「時価総額17兆円」という理想的な会社として、近年大きな注目を集めています。

私は同社にコンサルティングエンジニア職として入社し、4年間在籍しました。そしてその間に「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる」という、高賃金化を目指すうえで基礎となるコンセプトと、そこを起点とするさまざまな仕組み、および仕組みの連鎖について学んだのです。
次ページ > 本音を言おう、「夢がないんじゃない。お金がないんだ!」と

文=田尻望

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事