1店舗のみのコンサルであれば、売上1億円の店舗で生産性が10%上がっても、1000万円の売上アップにしかなりません。一方、フランチャイズ本部へのコンサルでは、本部の下に売上1億円の店が100店舗あれば、10%の生産性アップで合計10億円の売上アップを見込めます。
このように、たとえ同じ労力であったとしても、そして提供するものが同じ仕組みであったとしても、「どこにどのような影響を与え、その後どれくらいの影響の拡がりがあるのか」によって、そこに生まれる付加価値の大きさは変わってきます。つまり、「努力は報われる」のではなく、「正しい努力で価値をつくれば」報われるのです。
これを知ることができたのは、間違いなく前述した飲食店の現場です。そこでは朝9時から24時まで頑張っているのに、生活に対して十分な給与をもらえませんでした。「なぜこんなに頑張っているのに、給与が上がらないんだ!」と自問自答する日々が続きました。
今であれば、その理由がよくわかります。私がいくら毎日看板を持って呼び込みをして頑張っても、せいぜい月に何百万円、年間で何千万円の売上アップにしかならず、会社や事業全体の付加価値生産性を大きく向上させるまでには至らなかったのです。
繰り返しますが、本当の高賃金化を目指すためには、会社全体の付加価値生産性の向上=「1人1時間あたりの付加価値生産性を高め、高収益、高給与を同時に実現する」ことが必要なのです。
経営者と社員が共に「高収益と高給与の両立」を目指す仕組みづくりを
1人1時間あたりの付加価値生産性を高め、高収益、高給与を同時に実現するためには、経営者と社員が同じ価値観のもと、両者共に手を取りあって取り組むことが重要です。そして、「経営者と社員の双方が高い目標を掲げ、その利益目標を達成したくなり、その目標を達成するための『能力アップ』と『行動』、『仕組みづくり』と『マネジメント』をしたくなる」という状態にしなければなりません。
そのために必要な仕組みはいくつかあるのですが、ここではキーとなる、最も重要な仕組みを紹介します。それは、「全社業績連動型報酬制度」です。
「全社業績連動型報酬制度」とは次のようなものです。
・営業利益の一定割合を、一定期間ごとに全社員へ報酬として分配する。たとえば、営業利益が500億円出たら、その10%(50億円)を全社員へ分配する。
・1人1時間当たりの付加価値生産額の向上分の一定割合を、一定期間ごとに全社員へ報酬として分配する。たとえば、1人1時間当たりの付加価値生産額が5000円から10000円に上がったら、その差分(5000円)の10%を分配する。
※この場合、平均時給が500円、年間100万円ほど報酬が増えることになります。
・その他、「ストックオプション」「従業員持株制度」など
全社業績連動型報酬制度は、個人プレーではなく「チームプレー」を基本とし、個人責任ではなく「連帯責任」という考え方が基本となります。みんなで成果を出せば、みんなの報酬も上がり、みんなで頑張っても成果が出なければ、みんなの報酬も下がるのです。つまり全社業績連動型報酬は、「チームで価値づくりすることに対しての報酬」なのです。