本音を言おう、「夢がないんじゃない。お金がないんだ!」と
今は、高賃金化を実現する方法をみなさんに提唱している私ですが、実は、かつて低収入で生活が苦しく、悩んでいた時期があります。キーエンス退社後、26歳で知人と新規事業を立ち上げて失敗し、その後何とか職にありついたものの、9時から24時まで休まず働いて月収25万円(後で計算してみたら時給計算で666円)しかなかったのです。当時私は、すでに結婚していて子どもがいたにもかかわらず、収入が少なく、欲しいものも自由に買えない状態でした。実際に、コンビニでコーヒーを買おうとしたものの、手持ちのお金があと2、3円足りず、買えなかったことがありました。
このとき私は思いました。「将来、子どもが大きくなったとき、この子らの願いを叶えてあげられるだろうか?」と。お金を十分に持っていないと、子どもが「こんな習いごとをしたい」と望んでも、その願いを叶えてあげられない可能性が非常に高くなります。そんな将来に対する不安に直面し、どうしたらいいのかと悩む日々が続きました。
みなさんも、何かやりたいこと、または家族にしてあげたいことがあっても、「時間」もしくは「お金」が足りない、という理由であきらめていないでしょうか。
「時間」はつくろうと思えば、何とかつくれるかもしれません。しかし、多くの場合、私たちの思いや行動に縛りをかけているのは「お金」です。多くの人が、お金に余裕がないため、豊かな生活を送るために必要なお金を稼げていないために、さまざまな困難に直面しているのです。
厚生労働省が公表した最新データによると、日本の相対的貧困率(等価可処分所得が中間値の半分未満の世帯員の割合)は約15%で、6.5人に1人、すなわち2000万人以上が貧困状態にあるそうです。これはOECD(経済協力開発機構)に加盟する先進国の中で最悪の状況です。また、国税庁が実施した「令和3年分民間給与実態調査」によると、年収400万円以下の人の割合が5割を超えています。ちなみに日本人の平均年収は443万円で、その手取り額は349万円(月額29万円)です。
そんな中、「夢がない若者が増えている」とよく耳にします。しかし、「もっと夢を持って生きよ!」と言われても、とうてい無理な話です。ここで、彼らの本音を代弁して言いたいのは、「夢がないんじゃない。お金がないんだ!」ということです。
這い上がるきっかけ「経営改善」のために行った「3つのこと」
私が生活に困窮していた頃、雇っていただいていた社長から、ある日「お前、このまま終わるつもりか?」と言われました。この言葉を言ってもらえたことが、私の人生における転機となりました。「そんなわけがあるか!」と、自分の現在の状況に対して怒りがわき、取り掛かったことがあります。社長の会社への経営コンサルティングです。もちろんその会社に所属しているわけですから、「コンサルティングさせてください」などとは言えません。「店舗改善をやらせてください」と願い出たのです。私は、「売上、コスト、利益、離職率を改善すれば、経営と人の両方にとって良い結果になるはずだ!」と仮説を立て、「何が何でも改善する!」と意気込みました。
最初に改善に入らせていただいたのは、400席以上ある大阪・梅田茶屋町の居酒屋でした。腕のいい料理人が本格的な料理を作っている和食居酒屋だったのですが、当時は前年対比で大幅にマイナスとなっており、スタッフの離職もとても多い状況でした。