人生100年時代を生きるヒントは? グラットン教授に聞いた2024年のキーワード

リンダ・グラットン (ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授)

Forbes JAPAN2月号は、「『地球の希望』総予測」特集。戦争、気候変動、インフレなど、世界を揺るがすさまざまな事象が起きる「危機と混迷の時代」。2024年の世界と日本の経済はどうなるのか? 世界で活躍する96賢人に「今話したいキーワード」と未来の希望についてインタビュー。

著書『LIFE SHIFT 人生100年時代の人生戦略』が共感を得たリンダ・グラットン教授。前世代型の人生設計を多段階型に変えるにはどうすればいいか?2024年のキーワードをもとに、人生100年時代を生きるヒントについて聞いた。


──2024年のキーワードを一言で表すとしたら何でしょうか?

リンダ・グラットン(以下、グラットン):観察し、実験する──。見て、行動する年になると思います。予測不可能な年になるでしょう。というのも、この3年間に予測不可能な2つの大きな出来事があったからです。パンデミックは誰も予想していなかったし、生成AI(人工知能)チャットボット「ChatGPT」は来ることがわかっていても、そのインパクトの大きさを想像できていなかった。だから私たちにできることは、注意深く「観察」し、「実験」することだと思います。

──具体的に「実験」するとは?

グラットン:何でも試してみることです。例えば、私はChatGPTがリリースされた数日後に試してみました。すぐに何ができて、何ができないのかがわかりました。パンデミックの時も同じです。どう対応すべきか、誰にもわからなかった。いろいろと試すほかなかったのです。

──AIを試してみて、脅威、それともチャンスのどちらのように感じましたか?

グラットン:両方ですね。脅威であり、チャンスでもある。そして私たち人間がそれに備えるには、自分自身を変えなければならないことに気づくことだと思います。

──高校生に向けて「人生100年時代」の生きかたを説いた著書『16歳からのライフシフト』(東洋経済新報社)の中で、「変化はチャンスととらえよう」と提言されていますね。

グラットン:あくまで外からの考察ですが、若い人たちが現在の日本社会を窮屈に感じているように思えます。でも保護者世代は、子供たちに自分たちと同じような人生を送ってほしいと望んでいる。それ以外の選択肢を知らないからです。

そこで『16歳からのライフシフト』を書くにあたって、2つの大きなメッセージを込めました。1つ目は、従来の20代で学校を卒業後、60歳前後まで働いてから引退するという「教育→仕事→引退」という3ステージ型の人生から、マルチステージ化していく、というもの。2つ目は、お金に代えられない、健康や学習意欲、変化を恐れない気持ちといった「無形資産」がとても大切だということです。

若い人たちに大事なことは、既成概念にとらわれることなく、自分のための未来を想像することではないでしょうか。そして年配の人にとって大事なのは、彼らもまた時代の変化を受け入れ、学び続けなくてはいけないということです。どうすれば生産性を維持しつつ、世の中とかかわり続けることができるか──。健康だけでなく、交友関係でも活力を保つにはどうすればいいのか? どうすれば変われるようになるのか? これらは50歳になっても、16歳のときと同じように重要なことなのです。
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インタビュー=岡本純子 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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