AFPが話を聞いた戦車兵らは1980年代製のこの戦車に満足しているようだ。重量40トン、乗員4人のレオパルト1A5は砲塔の厚みが70mmほどしかなく、ロシアがウクライナで拡大して1年9カ月たつ戦争で使用されている戦車としては、おそらく最も装甲の防護が弱いにもかかわらず、だ。
AFPの報道からは、ウクライナ軍の戦車兵がどのようにレオパルト1A5の防御力の低さをカバーしているかもうかがえる。ビタリーという乗員はこう話している。「(レオパルト1A5では)3.5から5kmくらい離れた目標に照準を合わせられる」
ドイツの戦車メーカー、クラウス・マッファイ(現クラウス・マッファイ・ヴェクマン)はレオパルト1A5の主砲に、製造当時、世界有数の性能を誇った戦車砲を採用した。英ロイヤル・オードナンス(王立造兵廠)が手がける「L7」105mmライフル砲である。
最新の120mm砲に比べるとさすがに威力は若干劣るものの、40年たった今もL7はなお有効だ。L7の射程はおよそ3.5km。ロシア軍の戦車の技術では「わが軍と長射程の撃ち合いはできない」とビタリーは述べている。
もっとも、レオパルト1A5を優れた射撃兵器にしているのは砲自体ではない。それは砲とその安定装置、砲手が用いる光学機器、コンピューター化された射撃統制システムなどを含む、この戦車の統合戦闘システム全体だ。
ドイツ軍やデンマーク軍に配備されていたレオパルト1A5では、射撃統制システムにEMES-18が採用されている。EMES-18は、レオパルト1A5よりもかなり重いレオパルト2でも引き続き使われている。一方、ウクライナに供与されるおよそ200両のレオパルト1に30両含まれる元ベルギー軍のレオパルト1A5には、独自の射撃統制システムであるSABCAが搭載されている。
EMES-18は戦車の射撃統制システムとしてはいまだに最高の部類に入るものだ。EMES-18はレーザー測距器と弾道計算機を兼ね備える。静止した状態で砲の照準を合わせるには、砲手は光学機器をのぞきこんでジョイスティックで十字線を目標に重ね、レーザーを作動させてコンピューターに射程を計算させる。それから射撃を行うことになる。