サイエンス

2023.12.02 15:00

事実と異なる「偽の記憶」を集団で共有する「マンデラ効果」はなぜ起きる?

DerekTeo / Shutterstock.com

Psychological Science誌の研究は、この不可解な現象を説明するために、よく目にする特定の画像が、一貫して特定の過誤記憶を引き起こすことを明らかにした。研究チームは視線追跡に似た方式を用いて、日常的に注意を払わない相違や、あるいは視覚的に関連した相違が、これらの集合的過誤記憶を引き起こすことを突き止めた。実験結果によると、そのような誤認識は記憶を呼び起こしている最中に自然と起き、大多数の人々が正しい画像を見せられていたにもかかわらず、特定の画像に対しては一貫して同じ間違い、記憶違いをした。

「マンデラ効果」は心理学の範囲を超えているのか

心を扱うさまざまな学術分野において、記憶があてにならないことはよく知られている。記憶は時間と共に薄れ、間違い、常に信頼できるわけではない。この合意された認識によって、私たちは過誤記憶というものを理解することができる。しかし、集合的過誤記憶という現象は、心理学や神経科学の知見の範囲を超えているようだ。
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マンデラ効果に関する多くの研究と同様、上記のPsychological Science誌の研究も、なぜ多人数の集団がこのような偽りの記憶を共有するのか、確かな理由を知ることはできない、と結論づけている。この知識のギャップが、マンデラ効果を理解しようとする人々をさまざまな道へと導いてきた。

ある研究は、マンデラ効果とシミュレーション理論とパラレルワールドの関係を深く掘り下げ、これはある種の「マトリックスの矛盾」の原因であると主張した。別の研究では、これを過誤記憶の典型例であるという説を維持し、ただ非常に大きく不可解なレベルで起きているだけだと説明した。しかし現時点では、マンデラ効果は心の科学がまだ説明することのできない奇怪な現象のひとつであると言えそうだ。

結論

マンデラ効果は依然として得体の知れない謎であり、私たちの理解の限界に挑戦している。従来からの説明を覆し、深い謎をその痕跡に残したままだ。この問題に取り組む研究は、説明し難いその特質の表面を引っ掻くだけにすぎない。本質を理解しようとする試みは、現在の科学的理解の範囲を超えたところにある未知の領域の存在をほのめかす、陰謀論のような理論を導くだけであるように思われる。そしてそれは、掴むことのできない特異事象を生じさせる人間の心の能力を証明するものである。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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