サイエンス

2023.12.02 15:00

事実と異なる「偽の記憶」を集団で共有する「マンデラ効果」はなぜ起きる?

DerekTeo / Shutterstock.com

人間の作動自己概念(その時々に活性化し、時とともにかたちを変える自己概念)は、提起された知識に基づいて詳細な記憶を作るための手掛かりを得ている、と研究チームは説明する。これによって、過去の記憶を構築したり、未来の出来事を想像することができる。この構築プロセスは、最近の記憶と近々起きるかもしれないことのシミュレーションで満たされた精神空間である「記憶・想像システム(remembering-imagining system)」の中で起きる。
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しかし、このシステムは時折さまざまな理由によって誤作動を起こすことも論文は説明している。人間の記憶に関する現代的な理解は、記憶は常に正確であるという考えに異議を唱えている。実際、すべての記憶が、ある程度は偽りであるという議論さえある。

「マンデラ効果」は研究によって説明できるか

マンデラ効果は、本物であると感じているが実際の出来事から逸脱している記憶の構築が、集合的に起きる場合、つまり大勢の人々が同じ根拠のない事象や出来事を記憶として思い出す場合に発現する。80年代にマンデラが獄死したという虚偽の記憶は、この一例にすぎず、この用語が提唱されて以来、さらに多くの事例が確認されている。

たとえば、ほとんどの人が古典的な家族用ボードゲーム「モノポリー」で遊んだことがあるだろう。箱の表紙に描かれている「ミスター・モノポリー」について説明するよう求められると、多くの人がステッキと山高帽と片眼鏡の年老いた紳士を思い描く。しかし、どのバージョンのモノポリーにも、片眼鏡をかけた絵は描かれていない。それでも数えきれない人たちが誓ってその記憶が正しいと言う。

同様に、多くの人たちが有名なアニメシリーズの『Looney Toons』やドラマ・映画の『SEX in the CITY』シリーズ、ダースベイダーの名セリフ「Luke, I am your father」(ルーク、私がおまえの父親だ)を自信を持って思い出すことだろう。だが、実際には、アニメ番組のスペリングは「Looney Tunes」、ドラマシリーズは「SEX and the CITY」、そしてあのセリフは「No, I am your father.」だった(訳注:長嶋茂雄が引退した時のセリフは多くの人が「わが巨人軍は永遠に不滅です」と記憶しているが、実際には「わが巨人軍は永久に不滅です」だった)。
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翻訳=高橋信夫

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