なぜ低軌道に衛星を投入するのか?
スターリンクやカイパーなどの通信システムは、衛星コンステレーションと呼ばれる。コンステレーションとは星座を意味し、地球を周回する低軌道(Low Earth Orbit、LEO)に多数の衛星を配置することで、通信網システムを形成する。衛星放送や国際通信電話では静止衛星が使用されているが、この衛星は赤道上の高度3万6000kmの静止軌道(Geostationary Orbit)に投入さている。この軌道に配置された衛星は地球の自転と同期し、24時間で地球を1周するため、地上からは空の一点に留まって見える。つまり、日本の南方の静止軌道に通信衛星を1機配置すれば、それで日本全土をほぼカバーできる。ただし、静止軌道は高度が高いため、通信のレイテンシー(遅延時間)が大きくなる。
これに対して衛星コンステレーションでは高度2000km以下の低軌道に衛星を投入する。この場合、地上と衛星との距離が近いため、静止衛星と比べて通信速度は格段に速くなり、送信出力も小さくて済むので消費電力も抑えられ、衛星も小型化できる。
しかし、低軌道に配置された衛星は地球を95分前後で周回するため、サービス利用者の上空に、特定の通信衛星が留まる時間は短く、それ以外の間は通信ができない。これを解消するには複数の通信衛星を配置して、通信者の上空に常時、通信衛星がある状態にする必要がある。地球上のすべてのエリアでこの状態を生み出すには、通信衛星を複数配置し、地球全体を覆うように配置する必要がある。