宇宙

2023.11.27 09:30

モバイル宇宙戦争、スマホと通信衛星はいつダイレクトにつながるのか?

このスターリンクを追うのが、ジェフ・ベゾス率いるアマゾン(子会社カイパーシステムズLLC社)のサービス「プロジェクト・カイパー」だ。スペースXは自社開発したファルコン9ロケットによって週1回以上のペースで、1度に60機ほどの衛星を打ち上げているが、アマゾンのカイパーは、ジェフ・ベゾスが設立した宇宙開発会社ブルーオリジン社の新型ロケット「ニューグレン」によって12回、米国ULA社の「ヴァルカン・セントール」で38回、欧州のアリアンスペースの「アリアン6」で18回、計83回の打ち上げを契約済み。10年間で92回の打ち上げを行い、計3236機の衛星を軌道上に配備しようとしている。ただし、前述した3社3機のロケットの開発すべてが遅延しており、2023年11月時点ではどの機体も、1度も打ち上げられていない。

なぜ低軌道に衛星を投入するのか?

衛星コンステレーションの軌道イメージ(ⒸLamid58)

衛星コンステレーションの軌道イメージ(ⒸLamid58)

スターリンクやカイパーなどの通信システムは、衛星コンステレーションと呼ばれる。コンステレーションとは星座を意味し、地球を周回する低軌道(Low Earth Orbit、LEO)に多数の衛星を配置することで、通信網システムを形成する。

衛星放送や国際通信電話では静止衛星が使用されているが、この衛星は赤道上の高度3万6000kmの静止軌道(Geostationary Orbit)に投入さている。この軌道に配置された衛星は地球の自転と同期し、24時間で地球を1周するため、地上からは空の一点に留まって見える。つまり、日本の南方の静止軌道に通信衛星を1機配置すれば、それで日本全土をほぼカバーできる。ただし、静止軌道は高度が高いため、通信のレイテンシー(遅延時間)が大きくなる。

これに対して衛星コンステレーションでは高度2000km以下の低軌道に衛星を投入する。この場合、地上と衛星との距離が近いため、静止衛星と比べて通信速度は格段に速くなり、送信出力も小さくて済むので消費電力も抑えられ、衛星も小型化できる。

しかし、低軌道に配置された衛星は地球を95分前後で周回するため、サービス利用者の上空に、特定の通信衛星が留まる時間は短く、それ以外の間は通信ができない。これを解消するには複数の通信衛星を配置して、通信者の上空に常時、通信衛星がある状態にする必要がある。地球上のすべてのエリアでこの状態を生み出すには、通信衛星を複数配置し、地球全体を覆うように配置する必要がある。
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編集=安井克至

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