楽天モバイル、地上局はもういらない?
ASTスペースモバイル社(本社テキサス州)の動向にも注目が集まっている。同社は2022年11月、ファルコン9によってコンステレーション衛星の試験機「ブルーウォーカー3」を打ち上げた。同機は一辺が8mの巨大な通信用パネルを持ち、高度約520km前後の軌道に投入されたが、運用機「ブルーバード」はこの2倍以上の大きさになり、2024年から100機以上が打ち上げられる予定。このサービスの最大の特徴は、スマホとの直接通信に特化していることだ。ASTスペースモバイル社のパートナーは、米国最大手の通信会社AT&T(2023年5月提携)、ドイツのボーダフォン(2023年9月提携)、そして同社の初期資本を出資した楽天グループである。楽天はASTスペースモバイル社と提携することにより「スペースモバイル計画」を2021年に発表。2023年4月には市販スマートフォンによる相互音声通話の実験にも成功している。楽天モバイルは基地局が少ないことなどで苦戦を強いられているが、5Gにも対応するこの衛星サービスを2024年以降に導入することを目指し、そのウィークポイントをいっきに払拭しようとしている。
また、スターリンクよりも早い2019年2月から高速通信衛星を打ち上げてきたワンウェブ社には、ソフトバンク・グループが出資している。ワンウェブ社は2020年3月にチャプター11(連邦倒産法第11章)を申請したが、その後、英国政府とインドの大手通信会社バーティ・グローバル社による事業体に買収され、2023年5月時点で634機の通信衛星を、高度1200kmの軌道に配置。将来的には6372機を打ち上げる予定だ。
ソフトバンクはワンウェブ社のほか、スペースXとも提携し、その衛星コンステレーションを地方自治体や企業などの災害対策、または船舶用通信サービスに活用しようとしている。同時に、高度20kmの成層圏へ無人航空機を飛ばし、一般的なスマホと直接通信できるサービス「HAPS」を実現すべく、技術開発を進めている。
NTTは2022年7月、スカパーJSATと共同でスペース・コンパス社を設立。ソフトバンクと同様、HAPSによる法人向けサービスも検討しているが、一般ユーザー向けのスマホの衛星通信サービスは、いまだ公表していない。