一方、カイパーでは傾斜角の違う98の軌道に3236機の衛星を投入する予定である。スターリンクよりも機数が少ないのは、衛星の軌道高度が590km、610km、630kmと少し高く、1機の通信衛星がカバーできるエリアが広くなるためだ。ただし、高度が高くなるにつれてレイテンシーは大きくなり、通信衛星も大型化する。
宇宙につながるiPhoneとau
市販のスマホで使用できる衛星高速通信サービスを実現しているのは、2023年11月時点ではアップルだけだ。同社はiPhone 14、iPhone 15などのユーザーに対し、2022年12月から衛星通信サービスを米国、カナダで開始し、現在では欧州各国など16カ国で使用できる。ただし、日本でのサービス提供の予定はまだ公表されていない。iPhoneによるこのサービスは、緊急SOSだけに対応したものだが、圏外エリアからSOS発信できるこのサービスの有用性は高い。iPhone本体に小型アンテナが内蔵されており、利用者は表示パネルを見ながら、人工衛星の方角にiPhoneをかざす必要がある。通信衛星はグローバルスター社(本社ルイジアナ州)のものを使用。おもに高度1414kmの低軌道に25機が配備されているが、現行システムではデータ通信容量が小さいため、緊急通報にしか活用できない。それ以上のサービスを展開するには、さらに通信衛星を打ち上げる必要がある。
一方、スペースXは2022年8月、米国で2番目に大きな通信会社TモバイルUS社との提携し、一般的なスマホとスターリンクをつなぐサービスを米国で開始することを発表した。また、au(KDDI)とも2023年8月に提携を結び、同様なサービスを2024年中にも開始する予定だ。料金などの詳細は未定だが、これが実現すればスマホと通信衛星がダイレクトにつながる国内初のケースとなる。
こうしたモバイル通信サービスに対応するためにスペースXは、これまでの機体(260〜300kg)よりも大型で重いスターリンク衛星「V2 mini」(800kg)を2023年2月から打ち上げており、2023年中にテスト運用が開始する。初期はメッセージの通信だけだが、将来的には音声やデータの通信も目指す。