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2023.09.14

「スターリンク」の売上高は年間14億ドル、想定を大きく下回る

2023年3月24日、フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から、スターリンクインターネット衛星を搭載したSpaceX Falcon 9ロケットが打ち上げられた(Photo by Paul Hennessy/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

スペースXの衛星インターネットサービス事業のスターリンクの収益は、2022年に14億ドル(約2060億円)に達したことがウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が入手した内部資料で明らかになった。同社の収益は、2021年と比べて大きく跳ね上がったが、同社やイーロン・マスクの当初の予測からはほど遠い。

WSJによると、昨年の収益は2021年の収益の2億2200万ドルを10億ドル以上も上回っていた。資料によるとスターリンクは昨年赤字だったが、2023年の最初の3カ月は辛うじて黒字化したという。

2015年の投資家向けプレゼンテーションによると、スターリンクは2022年に120億ドル近い収益と70億ドルの営業利益を見込んでいた。

加入者数も当初の予想を下回っている。スペースXは昨年末に、スターリンクのアクティブ加入者数が100万人を超えたと発表したが、これは2015年に予測されていた2000万人の加入者数には程遠い。

フォーブスはスペースX にコメントを求めている。

2020年にベータ版が始動したスターリンクの衛星インターネットサービスは、4000基以上の衛星からなるネットワークを利用し、世界中のユーザーにアクセスを提供する。スペースXは、火星に人類を移住させるという大きな目標で知られているが、スターリンクはその計画に必要なキャッシュフローの大きな部分を占めている。

宇宙・衛星関連のコンサルティング企業Euroconsult(ユーロコンサルト)は、2023年にはスペースXの収益の40%以上となる32億ドルをスターリンクが占めると予測している。

9月13日に発売されたマスクの新たな評伝で、マスクがロシアとウクライナの戦争に介入するためにスターリンクを利用したことが明らかになり、物議を醸している。2022年初頭の開戦時に、スペースXはウクライナ軍にスターリンクの端末を提供しており、ロシアの攻撃で地上の通信インフラが破壊されても、ウクライナの兵士は司令官と通信が可能になっている。

しかし、この評伝によると、マスクは昨年、ウクライナ軍によるロシア軍艦隊への奇襲攻撃を止めるため、スターリンクのウクライナ南部クリミア近くのネットワークを切断するよう、エンジニアに命じたという。

彼は、ウクライナによる奇襲攻撃がロシアからの核爆弾を用いた報復を誘発することを恐れ、この措置をとったという。マスクは先週、既存の通信サービスを停止したことを否定し、ウクライナから依頼されたクリミアへのサービスの拡大を断ったと説明した。

この評伝の著者のウォルター・アイザックソンは、9月9日のX(旧ツイッター)の投稿で「ウクライナ軍は、ロシア艦隊へのドローン攻撃を実行するためにマスクに通信サービスをクリミアに拡大するよう求めたが、マスクはこれを断った。なぜなら、彼はこの攻撃が大きな戦争につながることを恐れたからで、彼の判断は恐らく正しかった」と述べた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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